理科学習指導資料小学校低学年理科の指導-005/116page
特に、児童の活動を重視する低学年の理科の授業においては、ペーパーテストだけでは学習のねらいが評価できない面を多く含んでいる。たとえば、たねまき、動植物の世話の仕方、わかった時の喜びなど行動に表われる面や心情的な面の評価については、教師が一人一人の児童の行動をその場で観察しながら行っていかなければならない。文字に対して抵抗のある低学年児童においては、ペーパーテストのみで評価することは、客観性を失うことにもなる。結論をいえば、授業の中での児童の様子をよく見つめながら評価していくより他に手はない。しかし、無計画な思いつきの評価では、次の授業にも生かせないし、真に児童を知る手がかりにもならないことも明白である。
そこで、特に、低学年の理科学習における評価について大切なことがらを次に掲げる。具体的には、後潟の実践例を参考にされたい。
評価は、次の三つに分けることができる。1)診断的評価(授業の計画段階で児童の実態をとらえる。)
たとえば、1年の「いしあつめ」の授業で、今までにどのような経験をもっているのかを調査することにより、石そのものを使った遊びの経験が非常に少ないとすれば、授業の中で、石を使った活動を豊富にとり入れなければ、ねらいは達成できないことになるし、また、虫に対する興味や関心を調査して、虫を嫌がる児童を発覚すれば、その児童と虫の好きな児童を組み合わせて虫探しをさせるなど、教師の指導上の配慮がほしい。
以上のように、児童の生活経験や興味、関心、技能などについての児童一人一人の実態を把握しておく必要がある。
そのために、ペーパーテストなど特別に時間を設けて実施する場合もあるが、できれば休み時間の児童との話し合い、遊びの中、あるいは他の教科の授業の中で、機会をとらえてさりげなく情報を収集できるようにしたい。
2)形成的評価(指導過程で、授業のねらいの到達度を調べて、授業改善に反映させる。)
形成的評価の重要性はいまさらいうまでもない。よりいっそう意図的、計画的に進める必要がある。今でも授業中の児童の様子を見てフィードバックしているとか、児童に挙手を求めて認識の度合いを調べ、進度の調整をしているといった方法はとられているが、こうした評価はともするとその場の思いつきで行われ、的確に授業の見通しを立てることができない。
形成的評価は、前もって評価の観点や方法を決めておき、計画的に評価ができるようにすることが大切である。また、ねらいからそれる児童の取り扱いについても具体的に配慮しておく必要がある。評価のサイクルは、単元を通して行われる場合も考えられる。たとえば、野外観察に出かけ、ねらいの達成度を調べて次の授業の計画を変更して、より効果的に授業を進めるといった場合などである。
実際、評価を実施する上で、行動や心情のとらえ方は難しいが、児童が自然の事物・現象にどのようにはたらきかけているか、何に気付いたかに評価のポイントをおき、行動のチェックやテープレコーダーを使って児童のつぶやきなどを収録したり、作品や記録などからとらえていく。
また、質問紙や感想文によって認識の程度や心情的な傾向をとらえていく方法がある。教師は、これら多様な方法を駆使して、個々の児童について理解をはかっていく努力が必要である。具体的には後掲の実践例を参考にしていただきたい。