第2回全国研究集会報告書-031/60page
個を生かす道徳指導の在り方
秋田県教育センター 主任指導主事 野呂田交平
1.研究の趣旨
児童生徒は経験や反省を通して自分を知り,他とのかかわりの中で自分自身の生き方を築いていく。複雑な人間関係の中では「正しさ」の一念を貫くことはなかなか困難である。しかし,やはり,よりよく生きることの願いを一人一人に大切にさせることが道徳教育の基盤であることにちがいはない。そこで次のような仮説を立てた。
「生活状況を観察することによって把握した一人一人の児童生徒の道徳性に配慮しながら指導を進めれば個を生かす効果的道徳授業ができるだろう。」
2.研究の内容
どんな願いを持っているか。どう生きたいと望んでいるか。児童生徒の生活行動は直接的,間的にそれらを物語る。本センターでは,学校における「休み時間」,体育館への「入場時」,教室における「学習時」,放課後の「清掃時」などにおける生活の様子を観察し,問題場面を一般化して示し,「あなたならどうしますか」という設問によって児童生徒の道徳性を伺い知ろうと試みた。
設問のために用意した場面は調査教師があらかじめ問題性を感じてそのことについて尋ねたものである。
本センターではこの資料を活用して,指導過程の在り方を検討工夫し,その実践によってどのような変容が見られるかを調査中である。
3.結果と考察
調査の結果を見ると,その問題場面に対する反応は多種多様であり,さらに,全く問題の所在をはきちがえているものまで反応はまさに十人十色とも言える様相を呈していた。
個を生かすということはどのようなことであろうか。その子特有のものを大切にし,その子に内在する独特のものを発揮させることであろう。たとえ,教師の感ずる問題点を取り違えて反応したとしても,その取り違いが,その子の性格や生活背景に影響されていることを見逃してはならない。その子らしさはそういう背景によって生じてくるものと言える。
しかし,児童生徒それぞれのちがいを大切にすると言っても,ものの見方考え方の未熟さからくるいろいろな様相を個性そのものと判断して指導を進めることは妥当ではない。個を大切にするということは,不適切なものの見方考え方やそれによる行動を野放しにすることではない。
4.まとめ
正しい道徳性を培うために,どの子のどんな点をさらに伸ばし,どんな点を矯正して望ましい生き方にいざなうかを考えての指導案の工夫とその実践による検証を進めている。