第2回全国研究集会報告書-045/60page

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(3)全体統括

「課題の集約と今後の方向」

国立教育研究所 連絡協力室長 高階玲治

 国研の高階でございます。私も以前北海道の教育研究所におりまして,全国の共同研究に参加させていただいたことがありました。そういうこともあって今日は,助言などではなく,皆さんと一緒に,方向性なども含めて考えてみたいと思います。

 今回のテーマをみますと,子供がいまして,それをあるところまで伸ばしたい。それを「個を生かす」というふうに言っているのだと思います。もし・現状として子供が生かされているのであれば,こうしたテーマは不必要なわけです。そこで,生かされていない状況は何なのかをまず考えてみましょう。20年くらい前の「日米の高校生比較研究結果」をみると,日本では「ガリ勉型・無気力型」,アメリカは「エリート型・エンジョイ型」でした。これは皆さんの予想と全く同じで,同じ高校生でありながら日本とアメリカでははっきり違います。しかも,日本の高校の先生方は生徒を「無気力型」に育てているはずはないのです。しかし,一生懸命になって子供を伸ばそうとした結果が無気力型になっていくとすれば問題です。さらにこのことは高校生だけの問題でなく,中学校や小学校のうちにすでに,「無気力型」の芽があると考えるべきです。私どももかつて全教連の共同研究「生徒指導」の折,全国小・中・高校の教員15,000人を対象に調査した結果,無気力・登校拒否・社会性の欠如・性非行が増えるであろうと予測しています。つまり,今回の共同研究はそうした子どもの問題状況を踏まえて,子どもを生かすにはどうすればよいか,という教育指導のあり方を探ることが基礎になると考えます。

 また,今回の共同研究は,10年前,横浜市の「個別化」の全教連共同研究にさかのぼることができます。そして,北海道の「生徒指導」,広島県の「自己教育力」の共同研究と続き,今回のテーマとなりますが,これらの成果をふまえることが必要です。横浜の「個別化」の研究では,全教連個別化モデルとして「学習到達度モデル」・「進度別モデル」・「学習適性モデル」・「コンピュータ利用モデル」等が残されています。が,今,「個別化・個性化」といって騒がれますが,これらのモデルは一般化しているのでしょうか。確かに先進校は増えていますが全国的に普及しているという現状ではないように思われます。

 次に,「自己教育力」の育成ですが,これは周知のように,学習者の意欲や意志,態度,能力,学び方,生き方を伸ばそうとするものでした。そこで「個別化」の方略は教師側からと言うことができ,「自己教育力」は子どもの側からと言えるのですが,両者の研究を結び合わせればこれで研究の内容はほぼ出尽くしてしまいます。それなのに改めて「個を生かす」とはどういう意味なのか,そのことを考える必要があると思います。そこで,今回のテーマ「個を生かす」ということについて,少し基本にたちかえって考えてみます。個性や能力に応じた教育は以前から言われていました。13期中教審では「個性を伸長させる」と言っていました。そして今回の臨教審の「個性重視」,教課審の「個性を生かす教育の充実」になりましたが,ニュアンスが少しずつ変わりイメージが拡散してつかみにくいと言われます。そこで,臨教審の教育改革の基本的考え方の8つの視点を考えてみます。第1は「個性重視の原則」で,これが基本です。次に「基礎・基本の重視」「創造性・考える力・表現力の育成」「選択の機会の拡大」の3つを横に並べます。そして,「生涯学習の体系


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