第2回全国研究集会報告書-046/60page
化」「国際化への対応」「情報化への対応」を横に並べます。これらすべてのものの土台として「教育環境の人間化」をおきます。さらに,横と縦から図化するとマトリックスができあがります。その空間は例えば次のように考えることができます。「生涯学習」に対しての「基礎・基本」とは何か,「創造性・考える力・表現力」や「選択機会の拡大」とは何か,というようにです。さらに,「国際化」や「情報化」についても「基礎・基本」とは何か,というように考えています。
このように考えていきますと「個性を生かす教育」の背景というのは,相当に奥深い背景を持つものであることが理解できます。そのことを今回の共同研究とどうつないでいくか,そこに今回の共同研究集会のねらいがあるわけです。
そこで,岩手県で提案された今回の研究の構造というのが大事になってくる訳です。岩手県の事務局では,そのプランとしてまず大きく2つ考えているようです。「個を生かす教育指導」ということを考えて,それを支えるものとして「個を生かす学校環境」をとらえている訳です。だから,個を生かす教育指導というのは,第1部会,第2部会の課題だととらえ,第3部会は,それを支えるものとして「個を生かす学校環境」を考えている。次に「個を生かす教育指導」というのを,今度は3つに分けます。認知的側面と情意的側面の調和,それから個と集団の相互作用,生き方の探求,さらに具体化して,基礎基本の習得,以下個性,能力の発揮,集団における自己形成,主体性,自立性の育成,たくましい実践力の育成というふうになっていると思います。
こうした考え方の上に立って,今回の発表があったわけですが,まだ整理された研究発表には至っていないというのが現状のようです。発表されたレポート内容全部を読んでいませんが,少し発表内容について考えてみます。「基礎基本の習得」については,福島県の林先生,島根県の内藤先生の「学習の仕方に関する研究」ということで学び方に関する研究,これは東京都研の白石先生の研究発表もそうでしたが,私は全教連の研究の軸に上がってこないかなと予想していました。こうしたものは研究の大きな目玉になると感じています。それから,今,全国で学習態度(授業中のおしゃべり)が問題になっています。おしゃべりで授業が成立しないとこぼす先生方,授業参観時のお母さん方の私話,そのために授業参観をやめた学校,ある私大の先生のおしゃべり大学生に対して一日で辞めてしまった例などたくさんあります。これはみな学習態度に関わる問題です。一番心配なのは「成長遅滞現象」のような子供達です。家庭,地域,学校の連携協力というのも含めて,「基礎基本の習得」の問題として研究内容に取り上げ深めていって欲しいと考えています。次に発表で注目したいものに,山形県の早坂先生の「創造性の研究」があります。個性と創造性との関係は大事だといわれる割には研究実践が少ないようです。実は,「創造性の研究」も20年ぐらい前は非常に盛んでした。しかし,現在はあまりない。今回の研究を機に再度見直してみたいと考えています。また,「思考力,表現力」について広島の佐々木先生,岩手の石田先生の発表がありました。個々の子によっての学習スタイルの違いに目をつけた研究,教師の指導側からではなく,子供の側に立った個性化の研究実践が今後盛んになるべきだろうと思います。ここで考えさせられるのは,表現力と関連しての「自己選択力」の問題です。今度中学校の課題として出てきましたが,この選択能力を育てることは中学校では遅いのではないか,小学校のうちから様々な形で意図的に身につけさせていく必要があると思います。こうした研究内容も欲しいものです。それから,「集団における自己形成,相互啓発,集団への適応,集団の維持,集団目標達成」にかかわる研究ですが,「集団における自己形成」のあたりは東京都研の井上先生の発表にみられます。この分野は今回の発表にはあまり無かったのではないかと思います。個というのは個別化すれば育つといったものでなく,