第2回全国研究集会報告書-047/60page
集団の中で育つものだという考えもあり,こうした研究の視点は大事だと思います。
そこで,「集団がもっている個を育てる役割」について考えてみたいと思います。集団力学から見ると,「集団維持機能」と「目標達成機能」面から考えられます。集団維持機能は,集団をまとめて,みんなが仲よくやれる,そういうものですが,今の子供を考えると仲間に入ることが困難な子供が多く見られます。そこで研究の視点として「集団適応力を育てる」が必要になります。それからもう一つ,その集団が何かの目標に向かって進んで行くという作用です。これを集団目標達成機能といいますが,集団を支える大切な要素です。このことをどうするか,これも研究の視点になります。お互いに啓発し合う関係をどうつくるか,適応できない個をどう生かすか,集団としての目標達成をどう進めるか等の具体的実践が大事ですが,今回の研究では,それらに関して深めていきたいものです。
次に,個性,能力の発揮の大事な要素である「主体性,自立性の育成」について述べてみます。主体性自立性を持たせる窓として学習意欲,目標設定,自己評価,価値形成が考えられます。今回の発表では,都県の井上先生の子供の自己像をどう再生させるかで,自己評価の観点から自己像をとらえさせる実践がみられましたし,秋田の野呂田先生は,価値形成の面からの実践でした。いずれも自立性の育成につながっていく研究だと考えます。
第3部会でテーマになった「個を生かす学校環境」の問題ですが,その1番目の「教育環境の人間化」これは,非行,校内暴力,いじめ等様々な学校不適応現象の時代背景から生まれました。まずは学校環境,そして地域環境,家庭環境を含めて,もっと人間らしい生き方を大事にする教育を進める必要があります。ですから研究では当然,学校不適応の問題,個が生かされていない問題を取り上げていくことが必要となるでしょう。環境面で学習条件の整備ということであれば,施設設備あるいはオープンスクールのような形とか,それにかかわる問題をどうするかについても考えていく必要があるでしょうし,個別化,個性化学習の保障ということであれば,例えば,オープンスペース活用のTT指導の工夫といった指導の展開も考えられるでしょう。とにかく,こうすれば個性化を進めることができるという,そういう学習を保障する方策を考えていく研究が大切だと思うわけです。
最後に,「開かれた学校」という問題ですが,3つの要素があると思います。1つは画一性といわれる学校の現状,2つに閉鎖性といわれる学校の現状,3つめに硬直性があるといわれる学校の現状ですが,これらをどう打開していくか,そうしたところに視点をおいた研究も必要と思います。例えば,地域の教育資源の開発です。人的な面も含めて地域の施設設備や自然環境の教材化といった試みがもっともっと必要ですし,未来に向かって開かれている学校はどういうものなのかを追究していく研究,こうしたものがこれからの研究課題として重要だと考えているところです。
ただ,ここで不足している面があると考えましたので付け加えますが,岩手県の藤枝先生や秋田県の柴田先生の発表にありました「学校経営」の視点が重要でないかと考えます。さらに教員の資質向上に関して福島県の八巻先生,青森県の澤田先生,福島県の菅野先生の発表がありましたが,教師のあり方もまた研究の視点として重要であると考えます。
まだ,いくつか触れられなかった貴重な研究もありました。
以上,本研究のテーマに関して本大会の発表内容に対して様々な話をしましたが,個を生かす,個性を生かすを考える場合は,個というものの多様性に対する教育を考えていかなければならないと思うわけです。個の多様性を生かすための教育の多様化,これが大きな課題であろうと思います。今後の本研究の成果を期待して私の話を終わります。