実践のための学校教育相談ハンドブック-001/083page
発刊にあたって
児童生徒は,「自分はやがて,こうなれたらいいな。」といったあこがれを持つ一方で,「今の自分はこれでいいのだろうか。」と,たしかめやふりかえりをしながら生活をしています。このように,現在と未来の自分のあり方に思いを抱き,目指す自己像を描いていくとき,新たな自己の目標が生まれてきます。
教師の役割は,児童生徒がその時々において感じている思いを,受容と共感の態度で理解することにあり,そのうえで,自ら考えた,新たな目標に向かって前進できるよう適切に支援し,集団とのかかわりのなかで,個性化と社会化を図っていくことが極めて大切なことであります。
ところで,近年において,不登校,校内暴力は増加の傾向を示し,いじめ非行等の問題行動では,過去に例のない特異な行動も目立つようになってきています。これは,人生の初期にあたる,学童期から思春期というかけがえのない時期にある児童生徒を取り巻く環境が,自己の確立や,他人を思いやり,いのちを大切にする心の成長にとって,好ましくない状況になっていることに起因しているとも考えられます。
それだけに,学校・家庭・地域社会はそれぞれの立場と果たすべき役割を再認識し,とりわけ,学校や教師はこれまでにも増して,その責任と課題を明確にし,解決に向けた取り組みをしていく必要があると思います。
「実践のための学校教育相談ハンドブック」は,児童生徒と向き合う教師が「今,何をどうすればよいか」と考えるとき,また,生き生きとした教育活動の展開を,学校教育相談の視点から見直す拠り所として積極的に活用されることを望みまとめたものであります。
本書の刊行にあたり,ご指導,ご支援をいただきました先生方に心から感謝申し上げます。
2000年12月福島県教育資料研究会 会長 安 部 哲 夫