実践のための学校教育相談ハンドブック-002/083page
T これからの学校教育相談
〜教育相談の「窓」から見える光の中の影〜
21世紀の黎明を迎える学校教育は,生きる力を基本に,児童生徒の自ら学び,自ら考える教育を支援し,知・徳・体の調和的な発達のもと,新たな生活や文化を創造する,心豊かなたくましい能力の育成を目指しています。その実効ある取り組みに意欲的な,それぞれの学校の児童生徒の多くは,教師や友達と向き合い,つながり合い,存在感やふれあいを深め,生彩にあふれた学校生活を送っています。しかし,一方では,学校の「主人公」であるはずの児童生徒が,ストレスを抱えて不安定となり,また,自信をなくし,自分を肯定できず,劣等感や疎外感を募らせ,受け入れられない自分との葛藤に苦悩する姿を見かけることは,めずらしいことではなくなりました。
こうした児童生徒の抱える問題には成長段階における発達課題の未達成,さまざまな体験不足,社会・生活環境の変化等が挙げられますが,直接的には,学校生活における人間関係のまずさや学業不振等が大きく関わっていることを,文部省の学校基本調査は明らかにしています。
今,学校は,問題を抱える児童生徒の心を癒し,ゆるやかに人間関係を改善し,また,すべての児童生徒の学校生活を,楽しく,居心地のよい学びの場にするには,これから学校教育相談をどう考えていけばよいのでしょうか。
〜新しい学校教育相談の考え方〜
これまで,学校における教育相談は,その本来の機能を十分果たし得ないきらいがありました。児童生徒に問題行動が出れば,担任,係,養護教諭らが「治療的な指導援助」を行うという,いわば,対症療法の関わりを主流とする狭義の認識であったことが大きな理由です。現在,増加傾向にある児童生徒の非社会的・反社会的な問題行動は,単に狭義の対応だけでは根本問題の克服には結びつきません。抜本的な解決を目指すには,教育相談の本来の目的である,児童生徒一人一人に対する理解を深め,心身のより良い発達を