実践のための学校教育相談ハンドブック-052/083page
14 薬物乱用 〜現実からの逃避,より強い刺激を求めて〜 (1) 現実からの逃避,より強い刺激を求めて
中学生や高校生の薬物乱用は,有機溶剤から覚醒剤へとますます深刻化しています。この薬物乱用は,ゲーム感覚やダイエット等への興味,好奇心によるものが多く,遊び仲間や卒業した先輩からの誘いなどがきっかけとなっています。このような行為に走る生徒は,周囲から受ける劣等感や疎外感に堪え切れず,現実世界から逃避して刹那的な陶酔感に浸っているといえます。
(2) 薬物乱用防止と治療的なかかわり
薬物使用の恐ろしさ(精神的な依存や知覚異常,運動機能・内臓・脳の障害,急性中毒による死等)を十分に理解させ,絶対に使用しないようにするために,予防的な指導の徹底を図ることが大切です。例えば,乱用の実態と障害について正しい情報を提供し,防止策について生徒同士の話し合い活動を設定するなど,学校や地域の実態に即した対応が必要です。
治療的なかかわりとしては,次の点に配慮したいものです。
本人に対しては,薬物使用を通して何を求め,何を訴えようとしているかをわかろうとするかかわりが重要です。厳罰や強制的な隔離などは一時的な沈静につながることはあっても,かえって乱用を反復させ,他の犯罪行為へ移行させたりすることがあります。『精神保健福祉センター』などの専門機関と連絡を取り合いながら,本人の気持ちの安定を図り,今後どうしたらよいかなどについて本人と一緒に考えていくことがかかわりの第一歩です。
親に対しては,その言動の裏側にある不安・葛藤等を受け止めながら,今後本人とどのようにかかわることができるかを十分に話し合い,共通理解を得ることが大切です。状況によっては,本人の医療機関への通院や入院等について話し合いをもつようにします。
但し,緊急場面(錯乱や興奮状態で自傷・他傷のおそれが切迫しているなど)では,警察へ連絡し,本人を保護することを最優先します。