実践のための学校教育相談ハンドブック-066/083page
8 ストレスによる心と体への影響 児童生徒が訴える心の問題や症状は,ストレスが影響していると言われています。適度なストレスは人を成長させますが,適応できずに過度なストレスが継続すると神経系の緊張と,体内のホルモンのバランスが崩れ,心の問題や症状が現れるということです。
このストレスが児童生徒の心と体へ影響するということと併せ,児童生徒の各発達段階の心理的・社会的・身体的特性を考慮したかかわりが大切です。特に,思春期・青年期になると精神的な障害が発症し始めることを踏まえ,適切なかかわりがなされるよう配慮していきたいものです。
以下,児童生徒によく見られる心の問題や症状の代表的な症例を上げ,その理解と対応について考えます。
(1) チック 〜癖?〜
首を曲げたり,頭を振ったり,肩をすくめたり,舌打ちしたり,瞬きしたりするなど身体の筋肉の一部を無意識に,瞬間的に動かす児童生徒を見かけることがあります。変わった癖だと思ってしまいがちですが,実はこれはチックと呼ばれるもので,小学校低中学年に多く見られます。チックは,心理的なストレスや葛藤を言葉で表現することができずに身体症状として現れることがわかっています。
学校や家庭では,叱ったり無理にやめさせたりしようとせずに,児童生徒の不安・緊張・不満などの原因を軽減し取り除くように努めます。また,ストレスがたまって攻撃的な傾向を現す児童生徒には,遊びや運動を通してストレスを発散させ,情緒の安定を図るような対応が効果的です。
チックは,本人がわざとやっているのではなく無意識のうちにしてしまう行為なので,症状が強い場合は専門医の治療を受けさせるなどして,長い目で温かく見守っていくことが大切です。