実践のための学校教育相談ハンドブック-075/083page
「実践のための学校教育相談ハンドブック」発刊に寄せて
福島県臨床心理士会副会長 渡 部 純 夫
この度,「実践のための学校教育相談ハンドブック」が刊行されますことを心よりお喜び申し上げます。発刊までには大変なご苦労がおありになったことと推察致します。先生方のご努力に対し敬意を表したいと思います。児童・生徒を取り巻く環境は複雑化し,その対応は日増しに難しくなる一方です。発達障害,不登校をはじめ,いじめ問題,非行,凶悪犯罪に至るまで様々な問題に直面させられる事になります。そんな時大切なのは,先生方が児童・生徒を信頼し,小さな事に惑わされず自信をもって関わることです。
しかし現実問題として,対応策が何もなくては,困難を極めます。先生方と児童・生徒の心のつながりが基本となるにしても,考えるための手引きが必要になります。その手引きとして,この「実践のための学校教育相談ハンドブック」が役立つことと思います。
先生方も児童・生徒も生身の人間です。皆,心を持っており,「成長」という課題をいつも抱えて生きています。日々刻々変化していきます。関わり方に「絶対」というものは無いのです。絶えず自分との関係の中で,いろいろな出来事を考えていかなければなりません。それは,時には辛いことでもあります。誰しも自分が問題に関係しているとは考えたくありません。自分とは全く関係のないところで起こっていることとして処理したほうが楽だからです。
しかし,それでは問題が解決の方向に動くとは考えられません。自分をコミットさせて物事を見ることにより,苦しみや悩みの中から「成長」が生まれてきます。先生方が児童・生徒との関係において,身を持ってそれを示されることにより,保護者が動き,地域が動き,全体が変化していくこととなります。
私も臨床心理士として何ができるのかを自分自身に問いつつ,今後も歩んでいきたいと思います。多くの関係者の皆様のご活躍をお祈り申し上げます。
(嘱託心理判定員,公立中学・高校スクールカウンセラー)