すぐに使える 実践事例集 平成13年10月-016/114page

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4 おわりに…

 クロス・セッションでは,思考力,判断力,表現力の育成はもちろん,責任感,協力性,連帯感も育ち,生徒一人一人を授業の主体者にすることができるのではないかと考えます。今回は,教師が課題を提示しましたが,生徒自身が課題を設定したり,アメリ力合衆国の授業の「討論班」のように,学習の目的に応じて様々な班を組織したり,多様な学習形態を組み合わせることも可能です。

 例えば,新聞などの作品を制作する場合には,右図のパターン@のような展開が考えられます。調べる課題が多い場合は,パターンAのように調査班の活動を2段階にすることもできます。直接経験が必要な場合は,パターンBのように調査班の発表を参加型の体験的な活動にし,発表班と聞き手班を交代させながら交流させるなど,様々な形態が考えられます。

クロス・セッションの発展型
パターン@
作品制作班→交流班→作品制作班→全体
パターンA
学習班→調査班A→学習班→調査班B→学習班
パターンB
学習班→調査班→出店方式の発表(発表班・聞き手班)

 初めは時間がかかると予想されますが,回を重ね,生徒や教師がこの活動に慣れてくれば,この問題は解消していくものと考えます。同時に学習内容の精選・重点化も考慮していかなければなりません。

 最後に,「クロス・セッションを実践する上でのボイント」をまとめてみましょう。

Point1 クロス・セッションに適する単元を選定しましょう

 生徒が分担しやすい共通課題を設定できる単元や,異なる視点や立場から追究することで課題を解決できる単元などに適しています。また,単元を構成する上で,調べ学習や話し合い・討論などの学習活動と組み合わせることがより効果的です。

Point2 生徒の実態に応じた意図的・弾力的なグルーブ編成を工夫しましょう

 クロス・セッションの最も重要なポイントです。グループ編成は生徒に任せるのではなく,生徒一人一人の実態(特性,人間関係等)を考慮して教師が編成します。各班にリーダー性のある生徒や社会科の得意な生徒を配置したり,上位生徒と下位生徒を組み合わせたりするなどの工夫が必要になります。下位生徒は上位生徒の援助を受けて学び,上位生徒も教えるということを通して,自己の学びを向上させていくことでしょう。

Point3 学習技能を身に付け,高めていく指導を工夫しましょう

 調べ方,まとめ方,発表の仕方,聞き方,話し合いの仕方などの学習技能を高めていくことが,クロス・セッションでは必要不可欠です。これらの学習技能はすぐに身に付くものではありません。学習の手引きなどを活用しながら計画的・継続的に指導していく必要があります。

Point4 調整役としての教師の支援の在り方などを工夫しましょう

 グループ間の活動の差を埋めていく手立て,班を組み替える際の支援の在り方,グループリーダーの育成など,調整役としての教師の役割を認識しながら,工夫を重ねていく必要があります。また,今回は学習過程を重視した実践を中心に紹介しましたが,教師は,学習内容を板書で構造化し説明を加えたり,ワークシートを活用して整理させたりするなど,基礎的・基本的な学習内容の定着を図るための手立ても合わせて実践していくことが大切だと考えます。

〈参考・引用文献〉 ○筒井昌博編著  『授業への挑戦163 ジグソー学習入門』 明治図書


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