『生きる力』を育てる指導と評価の 実践事例集 平成14年9月-024/142page
生徒の考え 〜ワークシー卜,個人新聞からの抜粋〜
○ 知らず知らずのうちに,我々"人間"が環境問題を引き起こす当事者となっていた。この問題の解決は,私達一人一人が強い危機意識を持つことから始めなくてはいけないと思った。
○ 問題解決のために努力している人々や団体がたくさん存在すること,行政や企業も様々な対策をとっていることが分かった。住民,企業,行政の協カ体制が必要不可欠であると思う。
○ 自分達の身近な問題なのに,多くの人々はその現実を知らないでいると思った。問題の対策として,どのようなきまり(法律,条例,条約等)があるかを知ることも大切である。きまりをつくったのは人問であり,ぬけ道をつくったり,破ったりしているのも人問である。
○ 先進国が開発途上国に責任を押し付けている。お金欲しさで言いなりになる開発途上国にも問題はある。ここには長い歴史と国同士の力の差があり,難しい問題である。でも,自分の国さえよければいいという考えではだめで,もっと世界全体に視野を広げていく必要がある。
○ 我々に安らぎを与えてくれる動植物や自然に親しみ,共に生きていこうとする考え方が大切だと思う。
3 おわりに…
生徒たちは,相互交流を通して修正や補充を繰り返しながら,自分の考えを深めるとともに,学び合うことの大切さを実感することができました。今回の実践は,今年度から公民的分野に新設された項目(中学校社会科学習のまとめとして三分野を関連付けながら,適切な課題を設定して学習を進める「世界平和と人類の福祉の増大」)や選択教科,総合的な学習の時間への発展応用が可能であると考えます。また,追究活動と交流活動を二段階で展開したり,1つの単元で新聞を2回制作したりするなど,部分的な実践から入る方法もあると考えます。
さらに,今回のような実践は一度だけではなく,回を重ねることでより一層の効果が期待できます。そのためにも,指導内容の精選・重点化を図るとともに,教師の創意工夫と年間指導計画への適切な位置付けが必要です。最後に,今回のような学習を進める上でのポイントをまとめてみました。
Point:追求(制作)・交流活動
興味本位に終始する活動の中では,社会認識を深めることはできません。生徒が社会的事象の持つ意味に気付き,自分の考えを広げたり深めたりしていけるよう,次のような教師のきめ細かな手立てや支援が必要になります。◆ 活動だけに興味・関心が集中しないように,生徒の実態に即した活動のねらいを明確にし,活動の各場面において,ねらいに沿った学習の方向付けをしていく必要があります。
◆ 活動状況に応じながら活動の停滞している生徒やグループ・リーダーに調査や考察の視点を与えるなど,個人差やグループ間の差を埋めていく支援が必要です。
◆ 課題追究意欲を喚起し持続させていくためには,学習活動に変化を持たせ,試行錯誤したり繰り返したりする場面や自己評値や相互評価を行う場面を意図的に設定していくことが必要です。失敗も学習の発展を導く契機として指導に生かしていく配慮が大切であると考えます。
◆ 基礎的・基本的な事項を定着させるという点から,複雑化した学習内容を板書やワークシー卜を用いて構造化し整理したり,確認したりする時間と場を適宜設定することも重要です。
<参考・引用文献>
○ 筒井昌博編著 『授業への挑戦163 ジグソー学習入門』 明治図書
○ 澁澤文隆編 『チャレンジ総合学習@ 中学校 国際理解ファックス教材集』 明治図書