『生きる力』を育てる指導と評価の 実践事例集 平成14年9月-033/142page
高等学校中学校 芸術科(音楽)
三味線と歌舞伎を題材にして
〜日本の伝統音楽に親しませる指導の工夫〜 江 川 龍 二
1 はじめに
日本の伝統音楽というと,親しむ機会が少ないために「分かりにくい」と感じたり,「古くさい」などというイメージをもつ生徒が多いようです。また,日本の伝統音楽を取り上げる場合,おもに鑑賞活動や知識・理解面の学習で終わってしまうこともあります。そこで,生徒自身による表現活動の場を授業に設定することで学習意欲を喚起し,楽しみながら日本の伝統音楽に親しませるための指導の工夫について実践しました。ここでは,三味線と歌舞伎を題材にした授業実践の例を紹介します。
2 三味線と歌舞伎を題材にした授業展開
近年,日本の伝統音楽では若い演奏家の活躍が目立つこともあり,生徒は和楽器には意外に高い興味・関心を示します。特に,三味線は生徒の学習意欲を充分に喚起することができると考えました。そこで,今回は「三味線」を題材に授業を構成しました。また,三味線が音楽的に重要な位置を占める「歌舞伎」をもう一つの題材として設定し,三味線での表現活動との関連を図りながら鑑賞活動を行いました。以下は授業の流れです。
第1次 三味線の導入と基本奏法(2時間)
☆ 三味線伝来の歴史,三味線音楽についての理解
☆ 三味線各部の名称や特徴についての理解,三味線の基本奏法第2次 歌舞伎『勧進帳』より『寄(よ)せの合方(あいかた)』の演奏とグループ発表(6時間)
☆ 『寄せの合方』の鑑賞,三味線パートの練習
☆ 口唱歌(くちしょうが)の体験,鼓の特徴についての理解
☆ グループごとのパー卜分担,担当パー卜の練習
☆ 発表のための中間リハーサルと相互評価
☆ グループごとの発表第3次 歌舞伎『勧進帳』の内容の把握と鑑賞(2時間)
☆ 内容の把握と理解
☆ 主要な部分の台詞による表現活動
☆ 見どころ・聴きどころを抜粋したビデオによる鑑賞とまとめこの授業は,1学年音楽選択クラス23名を対象に実践しました。では,授業の実際と指導の工夫について紹介します。