『生きる力』を育てる指導と評価の 実践事例集 平成14年9月-039/142page

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 授業前には,日本の伝統音楽に興味がなく,伝統音楽は「分かりにくい」「古くさい」などと考えていた生徒の感想です。

○ 鼓の口唱歌やかけ声に興味を持ったし,三味線をもっとやってみたいと思った。
○ 日本の文化や音楽にとても興味が持てた。歌舞伎は,日本のすばらしい文化だと思った。

北座による『寄せの合方』の発表の様子
〈北座による『寄せの合方』の発表の様子〉

 

(4) 歌舞伎『勧進帳』の内容の把握と鑑賞

 歌舞伎「勧進帳」について

 名場面の連続で,上演される機会が最も多い作品で,歌舞伎十八番※3の一つです。能の「安宅(あたか)」という作品を歌舞伎にしたもので,舞台の背景も能と同じ松羽目(まつぱめ)※4です。そのため,能から歌舞伎にした作品を松羽目物といいます。

  ※3 七代目・市川團十郎が,市川家に代々伝わる得意芸を十八演目選んで決めたもの。一般に・芸事の中で得意中の得意を「十八番(おはこ)」という。
  ※4 舞台の正面に大きな老松,左右の袖に竹が描いてある羽目板。

 歌舞伎の鑑賞の前には,国語科教師の協力を得て台本原文の一部をあらかじめ生徒に訳させる事前学習を行いました。鑑賞時には,物語のクライマックスの部分を教師が用意した現代語訳の台詞やト書きに合わせて生徒たち自らが演じる活動も取り入れました。下の資料は,物語を4つのシーンに分けた2と3の一部分です。漫画は,「イラストガイド歌舞伎入門」(いまいかおる・著)より転載しました。

 シーン2 物語中,最高の<見どころ>。次のセリフやト書きに合わせ,自分たちで演じてみよう。

(弁慶と四天王(してんのう)が数珠(じゅず)をもみ,最後の勤めを終えたところ。)
富樫 大変立派なご覚悟です。先ほど,奈良東大寺のための勧進(寄付)だとうかがいましたので,きっと勧進帳(募金の主旨を記した物)をお持ちのはず。 勧進帳を読んでもらいましょうか。この場で聞かせてもらいます。
弁慶 何と,勧進帳を読めとおっしゃるのか。
富樫 (きっぱりと)その通り。
弁慶 わかりました。

イラストガイド歌舞伎「勧進帳」

長唄♪はじめから勧進帳などありはしない。荷物の中から巻物を一つ取り出し,勧進帳として読み上げるのであった。
    (弁慶,巻物を取り出しアドリブで読み始める。)
弁慶  それ,つらつ〜ら……(中略)
    (富樫は巻物をのぞこうとするが,弁慶は見せまいと巧みにかわす。)
弁慶  ……少しの額でも寄付をした者は,やがて極楽にゆくことができるであろう。
長唄♪天にも響くほどに読み上げた。
    (読み終えた弁慶に,富樫はさらにするどい質問をして困らせようとするが,それに弁慶がすらすらと答えたため富樫は感心してしまう。) 

☆ 山伏問答の部分を自分たちで考え,創作してみよう!

イラストガイド歌舞伎「勧進帳」

富樫  どうぞ,お通り下さい。
長唄♪ああ,よかった(助かった)と関所を通ろうとする。
富樫  おいそこの下男,止まれ!そこから動くな!!
長唄♪さあ,これで一巻の終わりか,と一同は引き返す。
弁慶  (富樫に斬りかかろうとする四天王を押さえ)
     ちょっと待て!あわてて,しくじるな。この下男はどうして関所を通らないのだ。

イラストガイド歌舞伎「勧進帳」


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