『生きる力』を育てる指導と評価の 実践事例集 平成14年9月-062/142page
Q10 炭素による酸化銅の還元実験がうまくできない。 A この実験は定性実験であり,定量実験には向きません。定性実験として行った場合に,「どうも還元しないようだ。」また,「炭素と酸化銅の色がどちらも黒なのでわかりにくい。」というときは,以下の点に留意して実験を進めて下さい。
○ 酸化銅と炭素を乳鉢で十分に混ぜ合わせる。
○ 炭素の量は,反応比よりも過剰に加える。
○ 完全に冷却するまで,外部の空気と触れないようにする。
○ 試験管から取り出しても銅の粒が見づらいときは,試験管が冷えてから水を加えてみると,銅の粉が水の表面に浮いて見える。「加熱中,白煙が生じた。」というような事例も報告されていま
す。この場合は,活性炭素に水が吸着していて加熱により蒸気となって出てきたか,炭素以外の炭素化合物が含まれていてそれが乾留され白煙となったものと思わます。
(白煙を生じる物質が試験管に付着していた場合が多い。たとえば,ロウ)
炭素を用いた酸化銅の還元実験
Q11 ユージオメーターを用いて水素と酸素を化合させる実験を安全に行うにはどうしたらよいか。また,正確に気体をユージオメーターの管内に入れても,反応後に水素が残ってしまうがどうしたらよいか。 A この実験は爆発実験であるので細心の注意が必要です。
以下の点に特に留意して実験をして下さい。○ ユージオメーターの管内の1/3以上は気体を入れない。
○ 器具の取り付けをしっかりする。また,水素が残ってしまう問題ですが,水素と酸素の水に対する溶解度が異なるため,2:1の割合で酸素と水素を混合しても水素が残ることに原因があります。さらに,反応熱による水蒸気の発生なども考えられます。そのため,2:1で混合しても反応後の体積はゼロにならないことが多いようです。
この実験では,ユージオメーター内の水に水素と酸素をあらかじめ十分に通して,飽和させておくとよい結果が得られます。1気圧で水1gに溶ける気体の量(20℃)水素:0.018g 酸素:0.031g
※ 量を増やせば,視覚や聴覚にダイナミックに受け入れられますが,安全面とは相反する問題になります。反応のおもしろさやダイナミックさの前に安全上の対策を確実に施すことが大切です。
化学実験に共通なことですが,分量を間違うと実験がうまくいかないばかりか危険な場合が多々あります。特に水素などを発生させる場合には細心の注意が必要です。発生量が多くなればそれだけ危険が増します。さらに,そのような実験では生徒が勝手に実験を進めることがないように指導しなくてはなりません。
また,気体を発生させるなどの化学実験では万が一のことを考え,立ち実験が望ましいと言えます。