『生きる力』を育てる指導と評価の 実践事例集 平成14年9月-082/142page
(5) 容器内が十分冷えるのを待ってゴム栓をとり,注射器を用いて放射性元素入りの気体を入れる。その後,ゴム栓をしっかりはめ込む。
※ 無用の被爆を避けるため,放射性物質は袋などに入れて置く。(6) 室内を暗くし,ポケットライト光線を斜め横から当てて,α線の飛跡に沿って生じる霧の飛跡(約3〜5pの白いすじ状飛跡)を観察する。
3 霧箱の原理
気体を冷却していくと液体になるが,空気中に液体の核となる粒子がないと液体とならず,過飽和状態の気体のままでいる。このとき,放射線によって空気中の気体が電離すると,これが凝結核となって過飽和状態の気体が小さな液状の粒(霧の粒子)になる。飛行機が上空飛ぶと飛行機雲が生じる現象と類似したものである。
霧箱の場合,容器の上で蒸発したアルコール蒸気が,低温部分(下方)に拡散するときに過飽和状態が生じる。このとき,放射線が通過すると白いすじ状の飛跡が見える。
4 マントルからの放射線
市販のキャンプ用ガス灯の灯芯であるマントルには,希土類元素のほかに微量の232Thが含まれている(そのため放射性日用品と呼ばれ,分解等の変更が禁じられている)。232Thは約1.41×1010年かかって安定な208Pbになる。その過程で気体となるのは220Rnであり,その半減期は約1分である。そして,約11時間後には安定な208Pbになる。比較的安全に取り扱える放射線源といえる。
<参考文献>
○ 『手作り簡易型霧箱キット』 財団法人放射線利用振興協会テキスト
○ 『原子力が開く世紀』 日本原子力協会