研究紀要第3号 福島県診断標準学力検査問題報告書 国語科 - 036/060page
2.9、5年が54.0であるのにたいして、この学年では46.6というきわだって低い数値が出ている。このように、「読む」、「書く」とも文字力が劣っているということは、大きな問題である。
たしかに、改訂学習指導要領に示されている学年別漢字配当表をみても、4年に配当されている漢字数は、205字と6年間を通して最も多い。これは、当用漢字別表に掲げられた、いわゆる教育漢字の実に23%に当たる分量である。分量が多いということは、当然、学習の諸条件から出てくる抵抗度も、それなりに大きくなっていると考えられる。がしかし、4年生の時期は、一般に知識欲や知識量が急激に増大し、幅広い知識の摂取が可能な基礎的能力を備える時期だといわれている。それだからこそ、学年別の配当漢字数が最も多く、それにもとづいて、国語の教科書でも「新しい漢字」や「読みかえの漢字」が、6年間を通して最も多く提示されているのだと思う。
ところが、現状では前述の通り、文字に関しては「読む」、「書く」とも、前後の学年に比べて落ち込みがみられる。とくに「書く」の文字の正答率が低い。だいたいこの領域は、どの学年でも他の領域と比較して正答率が低いという傾向はあるけれども、4年の学力診断の結果としては、やはり最も目につく問題点である。ただ、「読む」ということと「書く」ということとは、密接な関連性をもった表裏一体の言語機能であるから、指導に当っては、両者の関連の密度をよりいっそう高めるような配慮が必要である。そして、日常での漢字を中心とした文字の指導については、計画、方法等をさらに研究し、改善していかなければなるまい。
〔2〕 領域ごとの考察
(1) 読む(文字)
大問番号 ねらい 小問数 大問正答率
一 二 三 四
漢字を正しく読む 漢字の音・訓を読み分ける 形の似た字を読み分ける ローマ字を正しく読む 辞書の引き方がわかる
10 4 2 2 2
57.7 72.9 68.8 44.3 43.0@漢字を正しく読む
まず、漢字の正しい読み方がどの程度まで定着しているか。また、正しく読めないのはどういう種類の漢字なのか。そして、読み誤りのおもな傾向はどうなっているのか等について、調査、分析をし、考察をしてみたい。調査・分析の対象にした漢字は、次の10問16字で、配列の順序は問題番号順である。(前掲の正答率表を参照)ア 音読み 選挙、相談、席順、種類、健康、標語
イ 訓読み 覚える、働く、整える、省くこれらの漢字を、学年別漢字配当表をもとにして分類すると、次のようになる。
ア 3年 1字 語
イ 4年 11字 選、挙、相、談、席、順、種、類、覚、働、整
ウ 5年 4字 健、康、標、省、(ただしこれらはいずれも繰り下げ漢字である。)この10問のうち、正答率が60%以下のものは、「標語」40.9、「覚える」56.5、「整える」47.6、「省く」27.7の4語で、他の正答率は、すべて60%〜80%の間にはいっている。
以上の調査からいえることは、概して音読みよりも訓読みの方が正答率が低く、また、「標」、「省」等の特定の繰り下げ漢字は、消化が不十分なせいか定着度も極端に低いということである。次に「省く」の場合を取り上げて、誤答の傾向やその背後にある問題点と思われる事がらを、もう少し詳しく分析してみよう。この問題は、