研究紀要第3号 福島県診断標準学力検査問題報告書 国語科 - 057/060page
うことが、たいせつな前提条件の一つとなってくる。そこで、動詞と形容詞とを一例ずつ問題にしてみた。動詞では、4段活用の「にくむ」を「にくまれ続ける」という未然形のかたちで、また、形容詞では「つつましい」を「つつましくひかえめ」という連用形のかたちで、それぞれ短文にしてだしたわけである。その結果は、前者の正答率が40.5であったのにたいして、後者の正答率は77.0であった。前者の正答率がこのように低くなったのは、品詞や活用形の種類には直接関係がなく、すぐあとに接続している受身の助動詞との関連性について、正しく判別できなかったためではないかと思われる。
次に、ある一つの漢字を漢和辞典で調べる場合必要な基礎知識の一つとして、漢字の部首の問題がある。そこで、偏や旁(つくり)がわりあいはっきりしていてやさしいものと、複雑でむずかしいものとを一例ずつ出題した。前者の例としては「ネ」を手がかりとして調べる「福」を、後者の例としては「心」をもとにして調べる「想」を取り上げてみた。ところが、どちらも正答率がたいへん低かった。
すなわち、「福」の正答率は34.7であり、「想」は24.4であった。「想」は抵抗度が高いので、正答率は低いであろうと予想はしていたが、それにつけても、全体の4分の1しかできないのは意外であった。また、より容易であろうと考えていた「福」を、漢和辞典で正しく引けるものが、6年生を終了する段階で、わずか3分の1しかいないということは、問題である。やはり日常の学習指導の中で、指導要領に示されている具体的な指導事項を忠実に指導し、その実践活動を積み重ねていく必要があるのではなかろうか。
(2) 読む(語句)
大問番号 ねらい 小問数 大問正答率
一 二 三 四 五 六
語句の辞書的意味がわかる。 反対語がわかる 同類語・同義語がわかる 慣用語句がわかる 文脈の中で語句の意味をつかむ 語句の構成がわかる
4 4 4 4 4 4
66.0 81.8 77.3 70.2 33.4 64.9この領域では、上記の表および前掲の正答率表を見てもわかる通り、「文脈の中で語句の意味をつかむ」のところだけが陥没していて、他の分野には問題はない。したがって、その分野だけを取り上げて考察をしてみよう。
ここでは、「まともに」、「おをひく」、「くじく」、「よそおう」と、動詞・形容動詞から慣用語までの4語について、各々使用例文を4例ずつ列挙し、正しく使っているものを2つずつ選ばせるという形式で調査した。その結果、最初の「まともに」の正答率が53.0でまともであったほかはみな悪く、「おをひく」が29.0、「くじく」が21.6、「よそおう」が29.9であった。
それでは、「おをひく」を例にとりあげて、70%にあたる誤答の傾向を分析してみることにしよう。なお、この問題文は次のような内容と形式にして示しておいた。
それぞれの文から、ことばを正しく使っているものを二つ選んで、その記号を○でかこみなさい。
2 「おをひく」
ア 事実におをひいて、おもしろおかしく話している。
イ 流れ星が、長く長くおをひいてとんだ。
ウ ねこがおをひいて、だるそうにねている。
エ あのときのきずがおをひいて、病気になった。
誤答の中でもっとも多いのは、設問の要求に応じて答えを2つ選んではいるが、その中に正答が一つしか含まれていないもので、約4割を占めている。次には、設問を正しく読まなかったのか、または読んでも正答が一つしかつかめなかったのか、とにかく正答を一つしか答えていないものが