研究紀要第6号 学習指導改善に関する研究 理科実験 - 010/036page
なると考えられる。従って,ある温度に対する空気の真の圧力は,これらの平均値に近い値であると考えられる。
また,図−4で,aのグラフとbのグラフとを比べてみると,温度上昇の場合と下降の場合における圧力の差に違いがあることに気づく。グラフaは空気室に100c.c.の二ロフラスコ(全容積120c.c.)を用い,グラフbでは空気室に100c.c.の枝付フラスコ(全容積210c.c.)を用いたもので,これは容器の形状・大きさによるものと予想される。
〔図−4〕空気室内の温度と圧力
さらに,グラフa,b,それぞれの組についてみると,低温部で広く,高温部になるにしたがって狭くなるような関係を示していることがわかる。
この理由については,まだ何ともいえないが,この傾向は,どの測定にも現われる現象である。
記載はしていないが,これまでの実験とは反対に,最初から空気室内の温度を高くしておいて,温度を下げながら測定し,ついで温度を上げながら測定を続けた結果をみると,前とは逆に,低温部で狭く,高温部で広くなる傾向が現われている。
なお,図のグラフaなど,0℃以下の温度調整には,電子冷却装置を用いて,徐々に冷却・加熱するようにした。
2,二酸化炭素について
次の図−5は,CO2について測定したものである。気体室には,100c.c.の枝付フラスコを用い,CO2はボンベから直接注入した。
300Wの電熱器で加熱し,温度上昇は60〜90秒で1℃程度の速さで測定し,温度下降は自然冷却と電子冷却装置とによって調整した。
グラフの(イ)は,CO2の温度上昇の場合,(ロ)は温度下降の場合であり,CO2においても,空気の場合とほとんど同様なことがいえる。
グラフの縦軸には,大気圧を加えた圧力の強さoHgで表わしてある。
〔図−5〕CO2における温度と圧力の関係
以上は,同装置によって得られたデーターをグラフ化し,そのグラフに見られる問題について考えを進めてきたが,つぎに,同装置によって得られた測定値が,どの程度の精度のものであるかを調べてみよう。
1,気体の体膨脹率の計算
同装置は,体積一定における気体の温度と圧力の関係を示すものであるから,次式が成立する。
t1℃における気体の圧力をp1
t2℃における気体の圧力をp2 } とすると
厳密には,気体室の膨脹を考慮しなければならないが,ガラスの体膨脹率は,2.6×10-5程度なので,ここでは,気体室の膨脹は無視した。