研究紀要第6号 学習指導改善に関する研究 理科実験 - 012/036page
中学校教材物質の相変化とエネルギーの指導
花 沢 繁
エネルギー概念の育成は,中学校理科の主要な目標のひとつとしてとりあげられている。これは自然現象も,エネルギーの変化・保存を手がかりに関係づけることができ,自然現象を総合的・統一的にとらえることができるからであろう。
いままで中学校においては,物質の変化の学習は,おもにマクロな現象・性質を手がかりにして粒子概念にせまることを目ざしていたため,物質の状態変化や化学変化をエネルギーの面から考察することはあまりとりあげられなかった。
物質の相変化・化学変化に伴うエネルギーの出入りに着目させ,そのエネルギー量を測定し,データを解釈することによって,相変化とエネルギーの関係から,内部エネルギーや物質を構成する分子間にはたらく結合力に着目させることもできるし,これらの学習により,物質変化の概念の本質的な理解にせまることもできる。物質変化とエネルギーの学習の前段階として,相変化とエネルギーの学習がじゅうぶんなされていることが必要である。ここでは,相変化とエネルギーに関するいくつかの実験について検討した結果と,指導についての考察を報告する。
T 実験
1.氷の融解熱の測定
(1) 方法
サーモカップ(発泡ポリスチレンカップ)の重さを測り,これに水をいれ再び重さを測って,水の重さを求める。
このサーモカップを断熱材でつくった箱に入れる。かくはん棒,温度計(1/10°目盛り)をとりつけたふた(サーモカップを切ったものか,サーモカップに合うように発泡ポリスチレンを丸くきったもの)をする。(図−1)サーモカップの中の水温を測る。
氷をピンセットでつまみ,表面についている水分をろ紙または紙タオルで十分ぬぐいとり,すばやくサーモカップ中に投入する。
かくはんを続けながら氷をとかし,水温が最低を示したら,その温度を記録する。
サーモカップのふたをとり,温度計・かくはん棒についた水滴をカップにもどし,サーモカップの重さを測り,氷の質量を求める。
水の失なった熱量,0°の水が得た熱量を算出し氷の融解熱を求める。
図−1 熱量計
(2) 測定結果の例
水の重さ(g) 氷の重さ(g) 初めの水温(℃) 終りの水温(℃) 温度差(℃) 融解熱(cal/g)
80.0 80.0 80.0 80.0 80.0
11.7 12.0 11.6 11.0 11.6
27.5 28.4 27.3 27.0 31.1
13.7 14.3 13.9 14.2 17.1
13.8 14.1 13.4 12.8 14.0
80.7 79.9 78.5 78.9 79.5※ 冷蔵庫で作った角氷
※ 室温22℃文献値m.p.0℃
Hf 79.67ca1/g
(3) 実験上の留意点
ア 使用器具について
サーモカップだけでは,測定値のばらつきが大きく,20回の測定で融解熱は,60cal/gから85cal/gの間に散らばり平均75cal/gであった