研究紀要第6号 学習指導改善に関する研究 理科実験 - 031/036page

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グラフを外挿し横軸と交わる点をBとすると,B点は,観測車が波を拾わないのであるから,音速と観測車の速度が一致する点と考えてよい。したがってOB=vとなる。
(1)式のKはグラフの勾配であるから
となる。
このK及びK′を入れると(1)式は

となる。すなわち観測者がU′の速度で音源に近ずくとき(遠ざかる場合はu′が負)は(2)式で示される振動数の音を耳にすることになる。
また,音源が静止している場合には
であるから(2)式は
と書きなおせる。
以上実験によって得られたデーターから出発して法則までもっていってみたわけである。

 

W おわりに

1,実験装置についての反省

@音源車,観測車とも,もっとおそい速度で安定に動くように作らねばならない。速度の調節は電源装置(直流)の電圧を変化させておこなったのであるが,速度をおそくするため電圧を下げると,車が安定に走らなくなり,充分なデーターが得られなかった。前掲のデーター中,速度10p/s前後のものは,台車のモーターで走らせたのでなく,机上にモーターを固定し,車を糸で引いて得られたものである。

A振動ペンには,記録紙との間に,まさつが少ないことが必要である。そのため,ソフトペン,3Bの鉛筆などを用いてみたが,レタリングセット用のペンが最も良かった。しかしインクの量が多すぎて紙をよごすような場合もあって問題は残るようである。
打点ペンは,3Bの鉛筆の心を抜き出して用いたが,先がとがっているかぎり,うまく使えるようである。

B振動ペンの振動数,記録紙の速度は実験中,一定であることが必要なので,それに使用するモーターや電源は余裕のあるものを使用する必要がある。最初振動ペンのモーターとしてマブチ13を用いたが力不足でマブチ36に変えて実験した。

C観測車用,音源車用,振動ペン駆動,打点ペン駆動,記録紙駆動と5つのモーターを使用するので,そのスイッチングをうまくコントロールする盤を考える必要があった。

2,実験装置のその他の活用例

ドプラー効果の実験だけでなく,この装置を応用して,波の基本式v=nλを導くことができる。v=nλの関係は案外に理解させ難いものであるが,振動ペン電源の電圧を変え,振動数を変化させ,記録紙を動かしその上に画かれる波の波長と,振動数の関係を求めてグラフ化すれば,振動数と波長が反比例関係にあることを容易に理解させることができる。

3,磁気テープを用いたモデル実験装置(予報)

今回実験したモデルは音源が動く場合に波長が変わることは定量的に,うまく説明できるのであるが,観測車が動く場合については直接的でない欠点がある。そこで上述の記録紙のかわりに,磁気録音テープを用いることを考えてみた。

音源車の振動ペンのかわりに録音ヘッドを使用し,低周波発振器の出力をテープに記録させる。
観測車には再生ヘッドをつけ,アンプを通しスピーカーを動かせる,と同時にオシロにつなぎ波長や振動数を観測する。
観測車を静止させておき,音源車を動かしても,音源車を静止させておき観測車を動かしても,振動数が変化することを耳で聞きわけられ,同時にオシロによって波長や振動数が測定できる筈である。この方がより実際に近いモデルになるかと考えられるが,どうだろうか,今後実験してみたいと考えている。


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