研究紀要第7号 児童生徒の生活意識と社会観に関する研究 性文化に関する調査 - 001/052page
T.は じ め に
金国教育所研究連盟への参加機関は,「子どもの社会認識の実態」というテーマのもとに研究に着手した。
いわゆる社会認識といわれるものの概念を統一的におさえておく必要があるということで,内容構造を下記のようにおさえた。(1) 社会的・文化的環境に対する認知をもととして,主体とのかかわりあいを通じて論理化していく過程である。子どもの知的な操作といってよかろう。
(2) 集団生活における実体験をもととして,人間や文化に対する見方,考え方を形成する過程である。子どもの体験性・行動性といっておこう。以上の論理性・体験性・行動性が構造化されることによって社会認識がなりたつと考えられる。
それらの3つが,子どもの社会認識の形成過程では、いろいろな構成のしかたをとることがある。
この考えのもとに,研究領域をつぎの三部門に分けている。● 社会認識と教育
● 教育文化と社会認識
● 生活行動と社会認識わが福島県は,第2の「教育文化と社会認識」の研究領域に属した。
ここで問題として話し合われたことは,性文化の認識のしかたが問題であるし、巷には性文化の氾濫があり,最近はとくに性の快楽を中心にした読みものや漫画などが,子どもの世界にも遠慮なくはいっているので,積極的に調査研究をすべきであろうとの考えのもとに共通課題@性文化に関するものと A家庭を中心にしての人間関係との2つの課題にしぼられてきた。昭和46年度は,性文化を主に取り上げることになり予備調査段階にはいった。
1 「児童生徒の生活意識と社会観に関する調査」にあたって
性文化をとりあげることになって,一部の先生がたから「寝ている子を起こすようだ。」と話されたことが印象にのこる。はたして子どもたちはパッチリと眼をさましているのか,あるいは寝たふりをして薄目をあけているのか,熟睡しているのかこんな点を調査をとおし究明したいものだと考えた。
ある方からは「性」とは何かセックスということば自体わからないのにこのことばをさけたいとのお考え,そこには性とは,不潔であり卑猥であるので,子どもには触れさせたくないという考え方があるのではなかろうか。
性とは「恥ずかしいもの」「けがらわしいもの」と考える親や教師の態度が,子どもに対しても押しつけるような考え方はないだろうかと反省させられた。性は,人間が成長するにつれて自然におぼえるものだし,おとなになれば,何の支障もなく性機能を営むことができるし,性をそんなに指導する必要がないではないか。また性と生殖とを直結させる意見をもっている方,あるいは調査にあたって「見るな,ふれるな式」の考えでご協力いただけない学校など,はたしてこういうことなのかと担当者自身調査の意義をもう一度考えざるをえなかった。
@ 調査のねらい
現在世界的な規模で進行している性解放の風潮のなかで,わが国の性文化も次第に解放的になりつつあるが,特にマスコミによる露骨な性の表現が子どもたちに大きな影響を与えていることが予想される。これは単に言葉や服装などの表面的なことだけでなく,その背景には,性や男女関係をめぐる人間のあり方が基本的に問われているという困難な問題が含まれている。