研究紀要第10号 教育相談の事例に関する研究 教育相談の概要と面接・通信の相談事例 - 013/022page

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(5) 集団不適応児

意義 集団行動の仲間入りのできない子
集団行動をかき乱す子など。
事例 集団行動の仲間入りを拒否し,粗暴なふるまいをする子
原因  
(1)
家庭内での欲求不満の蓄積
(2)
知能がよくても不満が多い
(3)
性格的に問題がある子
(4)
身体的に欠陥のある子
(5)
教師の注意を引きつけたがる子
(6)
何事にも自信を失っている子
(7)
基本的なしつけがついてない子
治療  
(1)
各種検査による真因の探究
(2)
生育歴の検討と親子関係の調整
(3)
学校と家庭との意見協力の調整
(4)
担任,級友の協力による面接治療

@ 在籍状況
氏名
所属
Y・U
S小6年

A 現症の概要
 ア,担任教師の報告から
  ● 学習面−理科の実験以外は無関心
  ● 行動面−神経過敏,暴力,無交友
  ● 身体面−身体の発達よく学級一番
 イ,母親との面接から
  ● おこりんぼ,いらいらしている。
  ● 何か考えている時は,通じない。
  ● なるべく干渉しないようにしている。

B 症状の起始・経過
 ア,粗暴,集団不適応状態は小3からつづいている。
 イ,S医大で脳波測定,薬服用
  (多動性症候群,情緒障害)

C 諸検査の結果
 ア,WISC知能検査,IQl37
 イ,児童性格検査
  ●依存的・学校へ不適応
  ●社会性乏しく,寛容さが不足
  ●理性的であり,家庭へ適応
 ウ,環境適応性検査( )内は段階
  ●心理的環境(2)●物理的環境(3)

D 診断・指導の方針
 ア,診断
  ●情緒不安●粗暴な言動●集団不適応
 イ,指導の方針
  ●粗暴言動の真因をさぐり処置する。
  ●担任,級友の協力を得て治療する。
  ●家庭と学校との意見を調整する。

E 指導の経過
 ア,学校・家庭における問題点話し合う。
 イ,行動・性格の特徴について話し合う。
 ウ,行動・性格の経過について話し合う。
 エ,適応検査,友だちは信用しない。
 オ,脳波測定,やゝおそい。
 カ,同上結果についての連絡。
 キ,金閣寺の工作完成(はじめて)
 ケ,はばたき機制作(自己中心の会話)
 コ,ペットの飼い方を教えてくれる。
 サ,飛行機とばし,級友の反省。
 シ,姉さんへの思慕,金魚の話。
 ス,はじめて姉さんとよぶ,集団に適応

F 考察
 ア,姉に対して「あんな奴」といっていたが思慕の行動はみのがせない。
 イ,学校できらいだという級友は,大すきな先生のそばにいくからで,それが粗暴な言動につながっていた。
 ウ,ことばだけでなく,物をとおしての愛情表現が親近感を深め,集団適応のみちを開いた。
 エ,逃避のための来所でなく,自分を理解してもらえる喜こびからであった。


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