研究紀要第10号 教育相談の事例に関する研究 教育相談の概要と面接・通信の相談事例 - 020/022page

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V 今後の課題

 現在,教育相談に来談する人々が増え,じっくりと継続治療に当ることができないほどになり,心ならずもストップをかけざるを得ない盛況ぶりである。
 だれしも,児童・生徒のよりよい成長を望まない者はいないであろう。

 知能の程度を知りたい,努力するが学業がふるわない,学習意欲がさっぱりない。病気,家庭の事情その他客観的な理由がないのに登校しない。衝動的で乱暴して困る。集団行動の仲間入りができない。進学や就職に迷い悩んでいる。夜尿で困っている。生理不順を心配している。家出をくりかえす息子をもてあましているなど,教育相談のたねは尽きない。

 もちこんでくる相談の内容は,いろんな条件のため情緒不安に陥ったり,内気なため欲求不満がこうずるとか,知能・学業・性格・行動・進路・適性・身体・適性の広範囲にわたって,個人的,家庭的問題,または,学校・社会などの問題など,実際にはいろいろな原因があって,複雑なため診断(指導)は難しい。それにしても,親子関係による問題行動の多いことに驚いている。

 教育相談が,これらの問題(現症)に応じ,よりよく成長(解決・治療)するための効果的な助力をあたえることをねらうならば,指示・非指示にこだわらず,個人尊重というカウセリング本来の立場に立って,来談者(通信者を含む)とのあたたかい人間関係をもつことが肝要であろう。

 本書にあげた事例は,すべて担当者が相談にあずかったもので,そのひとつひとつに教訓と想出がある。これをもとにしてさらに,教育相談を充実・発展させたいとねがっている。
 最後に今後の課題を箇条書的に揚げ,教育相談研究の新しい方向を検討したい。

1,相談内容の複雑多岐
 ● 事例の多様性からみて,専門的教養・技術を身につけた担当者を必要としている。
2,教育相談の共通理解
 ● 関心が高まり理解も深まってはきているが,まだ,全職員の共通理解はたりない。
3,検査結果の解決活用
 ● 諸調査・検査への関心が高く実施はするが,事実の記録と理解にとどまっている。
4,児童・生徒との接触
 ● 熱意はあっても,全児童・生徒への接触が不十分で,問題児だけになりやすい。
5,教育相談技術の研修
 ● 研修意欲にもえても,研修の機会がたりないので,技術が身についていない。
6,問題児の早期発見と処置
 ● 集団理解のための各種テスト・観察・測定により早期発見,迅速な処置をする。
7,家庭や関係機関との連携
 ● 家庭との連絡・学校との協力・関係機関(病院・児童相談所)との連携を密にする。
8,教育相談設備の充実と担当者の増員
 ● 教育相談室の内容を充実するために,テレビカメラ,野外遊戯場などを整備する。
 ● B級施設にふさわしい職員構成(専任5〜6・非常勤2)の検討・改善をすすめる。

担当者  伊 藤 武 司


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