研究紀要第12号 学校経営改善に関する研究 理論と事実編 - 001/016page
1.研究の概念
学校教育の直接的な研究の対象として,教育内容,教育方法・技術,そして教育経営があげられよう。しかしこのことは視点をどこにおくかということで,教育活動の面からみれば相互作用関係にある。その統括的立場は教育経営にあるということができよう。こうした考え方に立って,この面の研究を進めることにする。
教育経営は,広義にとれば,教育の本質をめざした「協力活動する努力の体系を維持する作用である」といわれようが,狭義には学校経営と同義に扱い,「組織活動の努力の体系を維持する作用である」とみることができよう。
そこで学校組織がとりあげられることになり,学校組織を「現実的な学校の教育活動に関係する諸要因の機能的な構造である」とし学校経営と区別して考えることにする。学校組織は,これを教授・学習組織と事務組織,運営組織とし,その各系列の機能化をはかるとともに,学校経営として相互関係における作用のあり方を具体事実をとおして追求し,今後の学校経営のビジョンを明らかにする。
2.研究のねらい
研究を進めるに当たっては,学校経営の条件を細分化するとともに規制し,「実情に即して完全学習をめざし」−(教育目標の具現化)−,「組織成員の協力により」−(学校組織の機能化)−,「努力の体系を維持する作用である」−(学校経営の本質化)−として問題内容を明らかにし,その視点を次のようにする。
(1)教育目標の具体的な指標,その具現化体系と管理過程
(2)教育の動向と社会の要請に対応する教育組織体制
(3)組織相互間の協力体系とその努力の継続作用としての学校経営なおこの研究は,昭和46年度の調査資料を基にした追跡研究である。
3.教育目標
教育目標は法規的に明確であるが,実践場面において,具体化の段階で一方的な指標になったり,空文化したりすることがある。こうした事態をひきおこす要因を除去することが必要になろう。そのため具体的指標の手続きや体制,その過程の管理などを究明することが考えられよう。
(1) 教育目標の具体的指標
教育の基本理念をふまえ,時代とおかれている現実に即応して,どんな人間像をめざしているか,教育目標の中核的内容として,次の5つの視点から追跡検討をしてみることにした。
@ 社会の進展に順応し,統制しながら働ける気力・体力を身につける。−生活対応
A 憲法や教育法規,教委の目標や要望などによる人間性をめざす。−普遍性
B 社会の変動や科学技術の進展に対応し未来に生き抜く社会性をめざす。−時代認識
C 日本の伝統の中から生まれる国民としての美風や,歴史の重さを近代的に身につける。−国民性
D 社会の改善意欲に立って,積極的に貢献しようとする人間性をめざす。−社会改変内容構成の実際に当たって,以上のような項目のどれに中心をおくか,あるいはその組み合わせの順位はどうなっているかについてであるか,公教育の立場から普遍性の理念を前提として,具体場面でどう扱うかということを確かめようとした。
表1 教育目標の内容構成
その結果は次のようである。
(%)
項 目 小学校 中学校 高 校1 普遍性による 25 20 42 普遍性に時代認識を取り入れる 11 13 193 時代認識による 9 8 154 普遍性と時代認識を中核とし,杜会改変を加味する 10 5 45 その他 45 54 58