研究紀要第16号 学習指導改善に関する研究 理科実験 - 015/020page
中・高 校 教 材実験教材としてのヒヨコの活用
−デンプンの消化・吸収を中心として−
平 山 宏
1.はじめに
理科教育における今日の課題は,どんな教材を,どのような学習課程をとおして,科学の方法を習得させるかが問題で,なかでも生きた生物教材をどのように入手し,それについてのしくみやはたらきをどう考察させるか。さらに,それをどのような方法で教材化し,探究させるかが研究課題でもあると思う。
そこで,孵卵場があれば,いつでも多量に安価で入手できる雌雄鑑別済みの雄のヒヨコを素材に2〜3の実験観察を試みたので,ここにデンプンの消化・吸収を中心に紹介する。2.ヒヨコを用いた実験方法
(1) ヒヨコの消化
@ ヒヨコの餌と糞の違い
ヒヨコの餌と糞の違いを観察し,それぞれについてヨウ素反応,糖の検出を行なう。
餌にあったデンプンが糞にないことから,どこでなくなったのか考えてみる。A ヒヨコの解剖
表1 各内容物の検出結果
ヒヨコを解剖し消化管のつながりを観察する。つぎに消化管を切り開き,そのう,前胃砂のう,小腸前端中央・後端,盲腸直腸の各部の内容物を,各シャーレにとり,蒸留水を少量加えてよくかきまぜ,それぞれについてヨウ素反応,糖の検出を行なう。
各消化管の内容物のようすと検出結果から,デンプンのゆくえについて考察する。またどのようにして,デンプンが分解されて糖になるのか考えてみる。
ヨウ素反応 糖の検出 餌 + − そのう + + 前胃 砂のう + + 小
腸 前端 − + 中央 − 後端 − + 盲腸 − − 直腸 − − 糞 − −反応あり……+ 反応なし……− 反応顕著……
(2) デンプン分解酵素のはたらき
@ 消化酵素のはたらき
図1
消化管及ぴその付属器官の組織片(一辺3o)を,パンチで切りぬいた直径5.5oの円形ろ紙にのせ,さらに図1のように寒天培地にのせて,定温器に30℃で24時間おき,ヨウ素液をうすく流す,円形ろ紙のまわりのデンプンが消失して,中央が透明でそのまわりが青紫色の円ができる。この円の直径を比較して,デンプン分解力の強さを調べる。対照区(煮沸した組織片)を設けて行なう。