研究紀要第20号 高校生の精神衛生・特に自殺および自殺未遂行為に関する考察 - 013/021page

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自殺(未遂)の直接動機と,自殺(未遂)の要因を相関的に表わしたものが表16である。

この表から,自殺(未遂)の要因として一番強く働いていると思われるものは,家族・親子の不和と,精神異常(自殺者の70〜90パーセントがうつ病であるといわれている)で,他を大きく引き離している。

また,自殺や自殺未遂の直接的な引きがねとしては,自己嫌悪が最も強く作用していることがわかる。したがって,無口でおとなしく,温和で良く努力するが,友人が少ないなどの,あまり学校では教師の手が掛らない生徒の取り扱いが非常に大切であることが再確認される。

ちなみに,これら自殺生徒を担任した教師たちが,生徒指導要録行動の記録欄に,これらの生徒をどのようにとらえ,観察と評価を行ってきてたかを考察してみると,非常に温和で目立たない−3名 性格が暗く,か黙であり,控え目である−2名 静かで沈思傾向が強く,友人はほとんどいない−1名 納得がいくまで根気よく一人で努力している−1名 自己顕示欲が極めて強い−1名 積極的である−3名 などがその特性として浮かび上ってくる。

さらに,行動評価の欄にCの評価を持つものは,Cが4個のものが1名3個のもの1名 2個のもの2名 1個のもの1名 と合計5名のものがCの評価を有しており,自殺(未遂)生徒17名中の約30パーセントがCを有していることがわかった。このことは,自己のホーム・ルームの生徒の可能性を信じ,よりよく評価し易い教師独特の評価基準のずれなどを加味して考えてみても,異常性を感ずる率があまりにも高かったのではなかろうかと思われる。

 (6) 自殺(未遂)のおこなわれた場所および遺書の有無

自殺(未遂)のおこなわれた場所は,本人の部屋が最も多く−8名,次いで家の近くの山野が2名,以下山の中,海岸,友人の部屋,近くの神社,自宅の中の自分の部屋以外の部屋が,各1名ずつになっている。

このことから,子供の部屋の管理・監督が,単に非行化の防止に役立つのみでなく,自殺の防止にも極めて必要なことであるといえる。したがって,子どもたちのために部屋を作ってやったのだから,あとは一人で勉強するだろう。

子どもたちのプライバシーを阻害することは教育上好ましくない。自主自律の精神を養うためには部屋の管理を子どもにまかせきりにすべきだ,などの親の態度は早急に改善されなければならない。

 (7) 自殺(未遂)生徒の学業成績およびクラブ活動

これらの自殺(未遂)生徒の学業成績は,大変バライェテーに富み,非常に成績が良いものから,まったく成績が不振のものまで,ばらばらな分布を描いている。しかし,いわゆる成績が上位のAランクの生徒たちの自殺(未遂)は,勉強づかれや哲学・文学などへの異常なまでの興味から起こっているとみられるものが多いのが一つの特徴である。

クラブ活動についても,文化系クラブ・運動系クラブの両分野に分布が広がっており,自殺(未遂)生徒が選別するクラブの傾向には,特別なものは見とめることができなかった。しかし,いかなるクラブにも所属せず,生徒会活動なども行わないものが一番多く,また,クラブに所属していても,活動をほとんどしていなかったものが多かったことが一つの特徴といえるかもしれない。

   17 自殺(未遂)生徒の学業成績

成績段階
A
B
C
D
E
人  数
3
6
4
3
1
17

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