研究紀要第20号 高校生の精神衛生・特に自殺および自殺未遂行為に関する考察 - 015/021page

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   20 秘密保持・他生徒への説明

地区
県 北
県 南
会 津
いわき
相双
個人の秘密の厳守
1
1
4
1
 
7
概要のみを説明する  
2
1
 
1
4
他に動揺を与えない
3
   
1
 
4
流言・好奇心の排除指導
3
 
1
1
 
5

 (11) 予防処置および対策指導−個人指導について

自殺未遂者および自殺行為を引き起しそうだと思われる生徒に対して,教育相談(カウンセリング)の実施が,極めて重要であり,しかもその相談や指導も内面的でなければならないとする学校は,それぞれ28と10と非常に数が多く,自殺防止のための歯止めとしては,個人面接指導が最も大切であると考えられているようである。だが,ここで大いに反省をし,注意を配っていかなければならないことは,「死んでしまったらなんにもならないよ」「死ぬ気になったらどんなことでもできるよ」「自殺するなんて,まったくよくないことだよ。罪悪なんだよ」などという,説得的・指示的・指導的な相談方法で面接をしないように努めなければならないということである。

このような面接は,無意味に近いばかりか,もし仮に,うつ病にかかっていることを知らないでいて,うつ状態から正常に,うつ状態から躁状態に病状が変りつつある生徒にこのような面接を行うことは,かえって逆効果となることを十分考慮しなければならない。

また,仮に精神の異常が無くとも,生徒が「死んでしまいたい」と告白してきた場合には,「死にたい程つらいんだね」と,その生徒の心情を心から受けとめ,共感的に理解し,できるだけ生徒の話を傾聴するように努力しながら,決して説得がましいことは言わずに,感情の浄化を徹底的にはかるのが望ましいのだということを再確認しておく必要がある。

しかしながら,自殺の意志のあることを暗に示されたり,知らされたりした時,あるいは自殺未遂行為があったあとでは,われわれ教師は,いてして自殺の無意味さや無価値なこと,反道徳的なことを,つい口に出して指導しがちである。自殺を望むものとて,自殺が反道徳的であり,無意味であることは,十分に熟知しておるのだが,それでもなお自殺を考えざるをえないことにいち早く気付き,感情のカタルシスを図るよう面接指導するのが最も大切であることを銘記すべきである。

なお,個別指導に次いで,早期発見が重要であると解答した学校は,26校にもおよんでいるが,自殺念慮の有無を,かなりの確かさをもって,調査し予測することは,非常にむずかしく,これといった適確な方法や心理テストも見当らないのが現状である。ゾンデー・テストなどが比較的自殺者の予測に役立つといわれているが,学校現場でこれを利用するには,技術的な面から困難といわねばならない。ただ,本人の自殺予告が時として友人の一人にもらされることがある。これをいち早く,いかに正確にキャッチし,指導を加えていくかが,学校現場における早期発見・早期指導と考えられよう。

自殺の動機・原因の追求と排除については,できうる限り努めなければならないことは当然であるが,家庭問題・経済問題・病苦問題など,教師が立ち入って指導と助言を与えることが困難な問題に遭遇することも多いので,これらについては,あまり深入りせず,それらの問題についての相談には,傾聴と心理的重圧の取り除きに努力すべきだろう。


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