研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 013/062page
以上の記録からみれば,児童の現場訪問,見学学習の理解面における限界が読みとれる。即ち,○ 見学や聞きとりを経験した主役の子どもたちの理解度に比して,受身にまわった子どもたちの反応が少ない。
○ 見た事のある施設,聞いたことのある事項については,子どもの理解をゆさぶる契機になるようである。
○ 子どもの疑問が,ピークに達した時に資料を提示するのは有効であるとしても,その資料から,ある理解をもり上げようとするには,具体的な先行経験が有効な手段であるようだ。またその効果も見届ける必要があろう。(3) 子どものノートから
授業の後に,まとめの記録をさせている。この中から3名ほど紹介したい。
・A児(SS 62)
学校ができるには,いろいろな人びとが協力して作られる。それを作るためには,つぎのようなことができる。たてるのはだれが建てるかというのも市長さんだった。
どうやってきめるかというのは,市の人びとの願い(学校を建てる)は,教育いいん会の人が市役所へ持っていって市長さんが市議会できめる。そしてみんなのねがいの学校ができる。
わたしがはじめて知ったことは,いろいろな人びとのたくさんの人のねがいがあって学校が建てられる。いろいろな人の相談などを通ってできるということだった。
・B児(SS 51)
市役所で市長さんといっしょに計画を立てる市議会で話し合う。また,市議会できめて計画をしてつくる。
父兄のたのみを聞いて教育委員会の次に市長さんがきめるのでないか。・C児(SS 33)
新しい学校を建てるには,市長さんと議員の人たちが話し合ってたて,市長さんが説明して議員さんやそういう人たちが話し合ってたてる。
A児は,はじめ学校建築は,市の人→市役所のかかり→市長と思っていたが,学習によって市議会,具体的に教育委員会がとり上げられている。
関係的なものの見方や,仕事のつながりを見る視野が広がっていると言える。B児は,支所における断片的な聞きとりによって一般的な理解はもっていたようである。しかし,学校改築については,市の人々→教育委員会→市長→市議会のつながりや関係について考えるようになった。
C児は,市の人→市役所というはじめの考えから,市長,議員とのかかわりに気づき,最初にあげたこの学習でねらった能力の1から4へと転移していることがわかる。
校舎の建築5時間の学習の中で,仕事となって具体化するまでには,市の人→市役所の係→市長→市議会というプロセスは,半数程度の児童がとらえている。このようなことを他の事例にもあてはめて見たり,考えたりする動機となったことはほぼ言える。しかしながらこれらの事は,言わば間接経験を伴うものであり相互の因果関係のは握にいたるのは,上学年であろう。
7 授業記録 〈その2〉
(1) 内容目標
道路ほそうの仕事から,市の人々と市役所,市議会とその結びつきをわからせる。
(2) 能力目標
公共施設についての仕事は,多くの人々のつながりの上に成り立っていることを,資料からとらえることができる。
1 学校に通う道,どろんこ道 道がわるい ←
どろんこ道を歩いた経験 ・どろんこ道はいやだ ・ぬかって歩きにくい