研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 017/062page

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 その学習が設定したテーマにふさわしいものかどうかは吟味の余地はある。また,単元展開の過程において,どの単位の学習を取り上げるかも授業者の判断によるところが大きい。

 実際の授業も何回も繰り返すことが必要であり,仮説し実験し検証を実施しなければならないと思う。
言うなれば,何年もかかることかも知れない。この意昧において,この授業も今後も継続されて結果がでてくるものであろうが,現時点においての「むすび」を考えて次回にゆずりたいと思う。

(1) 学習能力のとらえ方

 授業過程の中で,子どもの「事象に対する関係的な物の見方,考え方の変容」をとらえようと考えた。この場合,ものの見方,考え方をとらえる手だてをもっと究明する必要があったようだ。録音やノートなどの記録以外に,指導のステップにおいて質問紙などにより,児童の実態をとらえておくこともできたし,授業のプロセスにおいて,関係的なものの見方,考え方をさらに確実にとらえてもみたかった。

(2) 学習能力の変容について

 関係的なものの見方,考え方がどのように広がったかを実践から見ると,学校建築の中で,直接工事にたずさわる人,仕事を通してつながりのある人,学校という公共物から,他の公共物にいたるまで,身近かな所から,関連する他の領域にまで物の見方や考え方の範囲が拡大されて行っているようである。
 また,記録の分析の尺度として,3年生は,関係的なものの見方を人間関係の広がりでとらえることは,適当であると思われる。

 しかし,何かがわかったという理解と,それを通して培われる能力との違いについては,この経過を更に究明すべきだったと思う。
このことは,下位の目標行動を示し,こんな事ができることによって,関係的な見方ができ,更に広く,深まりの伴った能力の変容するプロセスを細かに究明してみる必要もあったようである。

(3) 資料と学習能力のかかわり

 学習の目標に立ち向う子どもたちが,学習中に考えのきっかけをつくったり,考えの広がりを持たせたり,考えを修正していく場合に資料が活用される。
 資料の,学習能力育成に果たす機能面を考慮すれば,学習内容と資料の密接な関係づけが必要であり,子どもの学習能力の向上をはかる教師の操作的な指導活動が大切であろう。

 適切と思われる資料づくりと,子どもがこれに取り組んで,資料を見る力,解釈する力,結びつける力などが養われ,一方,教師は,学習の経過を見ながら資料の特徴,分類,補修及びその効果まで見通す努力が必要であろう。
これらによって,子どもの学習における「つまずき」が,資料によって,より洗練されていくことが想定されるからである。


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