研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 019/062page
「冬げしき」による前提能力測定の方法・手順について
1 研究のねらい
子どもが,ある教材を習得する時,学習過程におけるつまずきや,学習目標達成が学習者個々によって著しい差が生じた場合(その障害となる原因は,こと学習能力のみではないが,本研究では学習能力にスポットをあてた。)前提能力として考えられる部分が欠けているために,総合能力が働かない場合が考えられる。この欠けている前提能力を事前に測定することができれば,学習者個々に対する手だてをよりよく構ずることができ,より高いレベルの能力が身につくのではないかと考え,音楽科の前提能力をひとつの教材により測定することにした。
2 研究の視点
音楽教材は,一般にひとつのまとまりを持った楽曲であり,曲としての音楽性と,その曲の持っている音楽的要素の2面を共有している。これを子どもサイドに立って能力におきかえてみると,より高次元の音楽的能力が曲の音楽性に深いかかわりを持ち,低次元の音楽的能力が曲の音楽的要素と関連してくるものと考え,音楽科の前提能力を,後者即ち曲の音楽的要素の中から洗い出すことにした。つまり,教材(楽曲)に働きかける総合能力のささえとなる前提能力の内容を具体的に「〜ができる」「〜を感じとることができる」という能力(教師サイドの仮説)におきかえて調査測定することにした。さらに,
(1) 音楽学習諸能力の中から,感覚的能力と知的能力にしぼり,技能的能力・態度能力を割愛した。
なお,感覚的能力には知的能力の機能が複雑にからみ合っているため,統合したものとみて測定した。
(2) 具体的教材は,未学習の小学校5年共通教材(歌唱)「冬げしき」をとりあげた。
3 測定のための手順
(1) 「冬げしき」を学習するために必要と思われる感覚的能力と知的能力を曲の音楽的要素からひき出す。(次頁掲載)
(2) 能力測定問題作成
(3) 問題の解説と,実音の録音(ピアノ)
(4) 学校での測定実施
(5) 能力測定問題の結果と考察4 測定の内容・方法
(1)内容 「録音原稿」参照
(2)方法 録音聴取により,解答紙に記入
@ 実施学年 A校 5年1組(38名)
B校 5年1組(36名)
A 実施期日 A校 50年9月17日
B校 50年9月19日
B 所要時間 約50分
C 測定用具 録音テープ,録音機,解答紙