研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 032/062page

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T 研究の趣旨

 授業において児童の特性に応ずる能力を指導方法の改善によって開発するために,教育理論と学校における実際的研究の両面から充実改善するための意図で,この課題にとりくんだ。

 児童の学習能力の発達をめぐる問題は,福島市の10%前後の現場教師から指摘されている。しかし成長の激しい小学校の子どもが対象となっているのは,その基礎にもっている学習能力(知的内容の保持量,学習を進めていくために必要な基礎的技能の定着度等)が,新しい情報を得ることによって思考のすじみちや考え方がどのように変容していくか,また教師が期待している学習能力とどのようなズレがあるか,その原因は何であるかを明らかにしていく。

 今回は,対象を小学校家庭科に限定し,子どもたちの思考の筋道をみつめることにした。

 なおこの研究は,福島県教育センター所員と現場教師(研究協力員)の共同研究であるが,上記の点をアプローチすることは,授業における子どもの能力の発達をよりよく理解するためにも,家庭科の研究をより推進するためにも極めて重要なことではないかと思われ着手した。

U 本年度研究のねらい

 研究は,家庭科の被服領域を中心に小学校5年・6年の授業における教材構造を明らかにするとともにその望ましいあり方を究明しようとするものである。
 この研究を進めるにあたって,あらかじめ次の問題点を予想した。

(1) 家庭科の前提能力を測定する方法,手順を教科に即して究明してみる必要があるのではなかろうか。

(2) 子どものありのままの前提能力と学習目標とのズレを明確にし,それを修正する学習のプロセスを明らかにする必要があるのではなかろうか。

(3) 学習目標にかかわる子どもの思考のすじみちを明らかにし,個々の子どもの思考のつまずきの要因は,何であるのだろうか。

 以上3つの問題点をあげてみたが,(3)を中心に研究することによって,(1)と(2)の関連を洗いだし,より望ましいあり方を志向しようとしたものである。

V 研究の経過と方法

 前年度は,基礎技能の発達という観点から,発達の条件や要因について究明した。

(1)標本と子どもの傾向
(2)基礎技能の発達状態(16項目)
(3)家庭科,技術・家庭科の学習態度と要因間(1)と(2)の関係分析

 本年度は,家庭科における被服領域を主とし,5年・6年の前提能力調査を実施する。
調査実施後(50年9月上旬)被服の題材を選定し授業を実施した(50年12月中旬)が,今回は授業における思考のつまずきについて見きわめようとした。

=研究実施の方法=

調査対象人員
学年
5年
1組
37名
3組
33名
6年
2組
35名
4組
42名

○ 前提能力調査による児童の分析
  (個表の作成)
○ 被服領域の題材検討
  (前提能力調査の個別分析項目から題材の選定)
○ 授業案の作成と児童・学習カードの検討
○ 実験授業の実施
 ・題材下位テストの実施
 ・授業観察記録より思考の過程とつまずきの検討
 ・事後テスト及び定着テストより児童の思考変容過程のは握

 研究協力員の構成は,5年1名,6年1名で,(福島市内地区に限定)1題材ずつ授業を実施する。事後,授業記録を整理・分析する。


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