研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 051/062page

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(カ) 抽出児による観察

 標本の活用をとおして,ひとりひとりの児童が「ゆるみの適量」をとらえていく過程を,3名の抽出児の学習参加の動きを追って観察してみよう。
 そして,この学習能力がどのように定着していったか,前提学習能力調査から事後テストヘ,更には持テストヘとその結果を追ってみよう。

 







箱の出し入れの
学習状況
箱の出し入れの学習状況
考  察



A
4
 Eの袋を分担し,箱の出し入れをする。
「口のゆるみがよくないね。」とつぶやく。
 リーダーシップを発揮し,物差で,わきのゆるみと,口をしめるためのゆるみを実測しカードに記入し,発表もする。  反応が速く,学習への取り組みが積極的である。グループをリードしようとする自信が見られる。
 このような意欲が,学習能力発達に影響すると思われる。



B
4
 Dの袋を分担し,友だちと,ふたりで箱の出し入れをして,ゆるみの様子を観察し,指名され発表する。  実測は,手を出さず友だちの作業を見ている。隣りの子へいたずらをする。  興味関心にムラが見られ,おちつきに欠ける。これは教師の標本観察のし方の説明不足と,グループ活動のあり方に問題があると思われる。



C
4
 グループの友だちが出し人れしている様子を黙って見ている。
実測の様子
 実測するようグループの人にいわれる。
 隣りの男の子に「斜めにしないで,片側に箱をぴっちりつけて,布を2枚しっかりつけて測るのだよ。」と教えられて実測した。記入は,しない。
 まわりの友だちに声をかけられないと,いつ迄も静かに黙っていて,積極的な参加態度を示さない。
 グループの友だちの注意や思いやりに支えられて学習に参加している状態にある。この班の態度は賞揚に価するが,個別指導の必要があろう。

・上記の3名の抽出児童は,いずれも箱に合った大きさの袋を正答Cと答えているが,そのたしかめの学習参加態度は,じつにはっきりとその違いを見せている。

上位群A児は,生き生きとしてリーダー的に
中位群B児は,中聞層としてまあまあの態度
下位群C児は,グループの友だちに支えられ

 このような学習態度の違いは,学習能力の定着にどのような結果を見せるであろうか。紙面のつごうで「わきのゆるみ」についてだけ述べる。

抽出児による観察

・A児は,授業以前に一応知識として○だったが,授業をとおして一層安定している。
・B児は,授業をとおしても不確実なところがあるが,題材内の学習で進歩している。
・C児は,授業後すぐの時点では良好であったが,は持テスト時,誤答になり問題が残った。


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