研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 056/062page

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(2) 実験授業の結果と考察

@ 観察の視点
 本時の授業の重点内容は,カバーの目的に応じた布地・形・大きさの選択である。@布地の選択については,布地のどんな性質に着目したか。それはカバーの目的に合っているか。A形は,大きさに合わせて使いやすく作るという課題に合っているか。B布の大きさは,寸法にゆるみやぬいしろをつけて考えられたか。この3点を中心として授業の記録をとる。教師や児童相互の働きかけをとらえるために,発問と応答を記録し,児童の思考の変容をとらえるために,個人別の記録カードを用いる。また,ABC各タイプからの抽出児童を観察し,細部にわたる反応の観察をする。板書や資料の記録もとって,思考の深まりとの関連を調査した。

A 児童の思考過程の実際と考察

 (ア)布地の選択について
 布地標本の観察により考えさせた結果,選択した布地は,全員もめんであった。選択した理由についての考察は,下記の通りである。

教師の予想反応

・じょうぶである。  ・汗や汚れをすいとる。  ・洗たくに強い。


始めの考え
学習活動
つけ加えたところ
A児
○水分をすいとりやすい。
○はだざわりがよい。
○洗いやすい。  ○安い
○布地標本を再度観察する。
(もめん・毛・ポリエステル)
○話し合いをする。(出た項目)
・洗たくしやすさ
・はだざわりのよさ
・汗をすいとること。
・価格
・ぬいやすさ
(※3人とも挙手し,B児が発言)
○考えを修正する。
○じょうぶである。
○ぬいやすい。
B児
○汗などをすいとる。
○じょうぶだから
○洗たくに強い。
○汗をすいとる。
○やわらかい。(手ざわり)
C児
○はだざわりがいいから ○洗たくに強い。
○汗をすいとる。
○やわらかい。

○ 児童は,既習の洗たく学習の知識と,標本の手ざわりを手がかりに考えていた。標本の提示が効果的であった。
○ A児は,既習の知識とともに,価格についての実用面をあげている。
○ C児は,既習事項が定着しておらず,標本による具体物を通しての思考だけに終わっている。共同思考により修正はしたが,知識の定着の悪さが,次にも影響を及ぼしそうである。
○ この活動を通しても,更にふじゅうぶんだったD児は,同じ綿であるサラシとブロードを区別して理解することができず,失敗した結果となった。教師は,2つの布の共通点と相違点を,きめこまかく指導する必要があると反省している。


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