研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 058/062page
(ウ) 大きさの決め方について
事前テストの結果,ぬいしろの必要に気づいた者は,63%,ゆるみの必要に気づいた者は,わずか16%であった。5年での学習が,次の内容に転移できるほど身についていなかったとの判断に立ち,かなりのつまずきを予想して,適切な資料をととのえようと努力した。
過程14で,布の必要量を図にかかせたところ,やはり65%の者がゆるみの必要に気づかず,ぬいしろだけをかき加えた。
このつまずきに対し,右のような資料で指導した結果,事後テストでは79%が通過し,は持テストでも70%の者に定着していることがわかった。残りの者に対しては,今後期末のまとめを利用して追指導する必要がある。次に,ひとりの児童の学習前と学習後の思考の変容を,記録カードにより追ってみることにする。この児童は,中位の者であり同傾向の者多数の中の一列としてあげる。
〈大きさの決め方指導資料〉
TP→布の大きさの決め方(3枚重ね)
○まくら実物(標準的な形)
○まくらカバー3種
@ゆるみもぬいしろもつけないもの
Aゆるみが2cmのもの
Bゆるみが4cmのもの
○ぬい方説明図とぬいしろの必要量
@ふくろぬい(ぬいしろ1.5cm)
A三つ折りぬい(ぬいしろ3cm)
事前テスト誤答→その理由(ぬうために2cm多くとる。)
(考えたわけ)
・ぬいしろをつけるため
・じょうぶにするため二
重にぬう。(※)
〈わかったこと〉
(たりなかったところ)
・ゆるみ
・ぬいしろの寸法のまち
がいこの児童は,ぬいしろだけつけたが,※印のところでわかるように,まくらカバーの機能を考えて,丈夫にぬうための方法を考えながらぬいしろの大きさを決めている。話し合いによる共同思考と,資料による指導を受けた後では,自分の考えのたりない面に気づき,考えを修正している。この考えが,次の型紙作りでも生かされ,自分のまくらの寸法に応じた布の大きさとして応用することができた。
最初の予想どおり,ゆるみの必要でのつまずきが多かったため,この例と同じ修正をした者が全体の58%になっている。そのほかのつまずきでは,ぬいしろやゆるみをどのくらい必要とするかの予想がつかず,寸法のまちがいが多くみられた。