研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 062/062page
X 研究のまとめと今後の課題
この研究は,「家庭科における学習能力の発達と授業における研究」というテーマで,今年度の研究を終了したが,ここに若干のまとめを述べたい。
家庭科の学習能力が比較的とらえられそうな題材(知的能力を含むもの)をあげて検討した点について要約してあげてみよう。@ 教育目標という価値的なものと密接に結ぶために題材の下位行動目標のたてかた。
A 児童に基礎と思われる題材で,どのように精選し,能力の段階に応じ適正なものにするか。
B 児童の反応や学級全員の動向をつかむため,学習カードの記録はどうするか。
C 児童の側から眺めた教材と教材の配列,順序など系統的な考え方と教え方はどうするか。
D 思考のステップから,指導書,参考書,掲示資料を眺め,学習指導の創意工夫はどうするか。上記の項目を実験授業の方法で推進してきたが教師の意欲が教材研究の質的深さにつながり,児童にわかり易く教えるという工夫がされた。子どもも楽しく学習し,本質へ迫る喜びと追求する態度が,計画・遂行する能力となり発揮されたといってよかろう。
反面,家庭科の性格上,要素の抽出やその調査に困難がみられた問題点(前提能力におきかえるときの正確さ)は,最も授業を素朴にあからさまにとらえようとする観察・記録・考察なのであるが,今後の研究で再吟味,修正の必要があろう。
次に一人一人の子どもの「思考の動きを深める」授業のため「前提能力と学習タイプ編成表」の作成をした。@ 学習能力をみつめる網の目を作り測定し,学習指導個別化の資料にする。
A 調査で予想されたつまずきを明らかにする。
B 子どもにわかる喜び,相互の協力から正しい考えを探りだす真剣さと努力にふれる。
C 資料から困難度のある思考場面を想定し,奥深いものに到達させ,見直す目をもつ。授業は,集団活動とからみあう授業づくりの追求であるが,前提能力調査及び事後テスト・定着テストから個々の変容度合いの考察を試みたが,授業によって高められた能力の評価判定は,最もむずかしく追調査の仕事が残った。ただ子どもが真に自主的に学習していくための思考の筋道やつまずきを見出すことは,意識的に考えられたが,「一人一人の子ども」の実態には,かなりの断層が見受けられた。
即ち,教師が子どもをよりよく伸ばすには,能力形成上,児童数に限界があり,子どもの思考の発展,下位群の子の変容に迫る残された課題も多い。この原因の追求に焦点をあて,次年度に取り組みを続けたいと念じている。
− 参 考 文 献−
・能力差に応ずる学習指導の改造 明治図書 ・中学校技術・家庭科における技術的な能力形成に関する研究 埼玉県教育センター ・学習指導の最適化に関する開発的研究−家庭科− 三重県教育研究所 ・基礎能力と授業構造−家庭科− 東洋館出版社 ・子どもの思考のはたらき 大日本図書 ・児童・生徒の発達の特徴に応ずる教育
−家庭生活に関する技能の発達−福島県教育センター