研究紀要第23号 幼児教育の研究 公立幼稚園における心身障害児の実態調査および人物画テストによる性格診断の考察 - 012/015page

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これらの指標は,

 (1)質的な指標
 (2)特別な容貌の指標
 (3)欠如の指標

の三つの領域に分けて整理される。このなかで特別な容貌の指標どいうのは,子どもが描く人物画には普通あまりみられないものである。
 欠如の指標というのは,その年齢の子どもの人物画には「期待しうる項目」として,当然出現するはずでありながら,しかも欠如しているものである。

@ 採点方法   

右の例2図において期待項目では,口と胴がないので−2となり,異例項目では該当項目がない。
  H・F・D得点 −2+0+5=3となり,知能水準は平均下である。

○器質的徴標では,胴の欠如,水平の腕,手の欠如,棒状の脚,四肢の非相称,手の切断がチェックされ,脳損傷のあることをはっきり示している。
○情緒指標では,胴の欠如,短かい腕,手の欠如,怪奇像,四肢非相称,傾斜がチェックされ,脳損傷児であり,内向性と情緒不安をはっきり示している。

例2
氏名
W・C
性別
年齢学年
6歳8ヵ月
小 1
I・Q
WISC
69
主訴
落ちつきがなくて困る
H・F・D所見
脳損傷児の典型的な描画である。コピッツ法による分析では,胴の欠如,棒状の脚,四肢の非対称など岩質的徴標のほとんどがみられる。
例2

   表9 発達項目一覧表

1.頭:はっきりした輪郭を描いている
2.目:目と認められる
3.瞳:目と輪郭の中に,円または点をはっきり描いている
4.まつ毛とまゆ毛:どれか一方,または両方描いている
5.鼻:鼻と認められる
6.鼻孔:鼻の輪郭に加えて,鼻孔にみえる点を描いている
7.口:口と認められる
8.くちびる:上下二つの輪郭をはっきり描いている
9.耳:耳と認められる
10.髪:髪と認められる,または帽子をかぶって髪を隠していると認められる
11.首:頭と身体の間に,はっきり区分して描いている
12.胴体:輪郭をはっきり描き,胴体と認められる
13.腕:腕と認められる
14.両腕:1本以上の線で描いている
15.下に下がった腕:片腕または両腕が水平から30度以上下がっている
16.肩に正確についた腕:肩をはっきり表現し,そこに,しっかり腕がついている
17.ひじ:はっきり角度をつけている
18.手:腕や指と,はっきり区別でき,腕より広くなっている。または腕時計や腕輪などによって腕と区別している
19.指:腕や手と区別され,指と認められる
20.正確な指の数:片手に5本ずつある
21.脚:脚を表現している,脚を描いていなくても,スカートなどで十分に脚を相像できる
22.両脚:両方の脚を一つ以上の線で描いている
23.ひざ:はっきり角度をつけている,または,ひざ小僧をはっきり描いている
24.足:足と認められる
25.両足:かかとから一方に広がり,高さより長さが認められる,または,前からみると,遠近法を用いて描いている
26.横向き:全身を,または,頭だけ横向きに描いている
27.衣服(0か一つ):はっきりした衣服表現がないか,また,帽子,ボタン,ベルト,衣服の輪郭のうちの一つだけ描いている
28.衣服(二つか三つ):次のもののうち二つか三つ描いている。ズポン,スカート,シャツ,ブラウス(ベルトで区分するツービースの上部分はブラウスとみとめる),コート,帽子,ヘルメット,ベルト,ネクタイ,髪リボン,髪飾り,ネックレス,腕時計
29.衣服(四つ以上):上の項目を四つ以上描いている
30.均整のとれた描画:みた目に均整がとれている,生物学的に正確で あるかどうかは問わない

   表10 情緒指標一覧表   ( )内の年齢以下のときは,情緒指標として認められない。

T 資質的な指標
 1.人物の各部分の不統合(男7歳,女6歳)
 2.顔に陰影をつける
    顔全体の,一部分を陰で覆う
    そばかす,麻疹の斑点を含む
    皮膚の色を示すため,顔や手を軽く陰をつけるのは,スコアされない
 3.胴体に陰影をつける(男9歳,女8歳)
 4.手か首に陰影をつける(男8歳,女7歳)
 5.ひどく非対称な四肢(手足)
    双方の腕や脚の形が著しく違っている
    形が同じであれば,大きさは不揃いでも,スコアされない
 6.15度以上傾いている人物
 7.小さな人物(5センチ以下)
 8.大きい人物(23センチ以上)
 9.透視画
    身体の大部分か,手足をつつむ透視画1本の線や,身体を横切1本の線や,身体を横切る腕はスコアされない
U 特別な容貌の指標
 10.小さな頭(全身の10分の1の小さい頭)
 11.寄り目(両目とも内がわ,または,外側に向いている横目はスコアされない)
 12.歯
 13.短い腕(腰にまでとどかない)
 14.長い腕(ひざまでとどく)
 15.胴体の脇についた腕(胴と腕と間隔がない)
 16.大きい手(顔と同じくらいか,それよりも大きい)
 17.手や指のない腕(両腕の間の間隔なし,また,ポケットに隠された手はスコアされない)   
 18.くっついた脚(両腕の間の間隔なし,また,横向きの描画では,一つだけの脚)
 19.性器(写実的なもの,また,象徴化されていてもはっきりとしたもの)
 20.怪物,あるいは,グロテスクな人物
 21.自発的に3人以上の人物を描く
 22.雲,雪,雨,飛んでいる鳥
V 欠如の指標
 23.目の欠如(完全に目がない) 
 24,鼻の欠如(男6歳,女5歳)
 25.口の欠如
 26.胴体の欠如
 27.腕の欠如(男6歳,女5歳) 
 28.脚の欠如
 29.足の欠如(男9歳,女7歳)
 30.首の欠如(男10歳,女9歳)

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