研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 026/106page

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 しかし,各観点ならびに小問をさぐって行くと「知識・理解」は46.2%,「資料活用の能力」は49.1%で出題の意図に近い結果を示したが,「社会的思考・判断」は27.0%で,大きな陥没点となった。このように各観点別に比較すると正答率には大きな差がみられる。

特に観点別に分析考察すると,「知識・理解」では大問の正答率は45%台であるが,小問の正答率を分析すると,「四大河文明の位置と内容」では,個々の事象の知識の習得は良いが,関係は握の理解が極端に悪い。また,知識そのものが的確におさえられていないため,事象間の対比的な問題や総合的には握する問題の理解力は,いずれも30%を割る大きな陥没点となっている。

 「資料活用の能力」では,全般的にみて小問別の正答率については比較的大きな差はみられなかったが,年表などの時代的背景をさぐる因果的、患考力をみた問題の正答率は特に低い数値を示している。

 「社会的思考・判断」では,「各時代における文化の特色」についての正答率は特に低い。文化遺産の学習については視覚的な教材の思考判断力を養う訓練が必要である。また,「ヨーロッパの近代化」の設問では,歴史的事象についての原因結果をみた問題の正答率が特に低かった。

総体的に結論づけると,やや高次で複雑な歴史的思考力に弱く,社会的な諸事実・事象,特に時代の特色・背景といった基本的な知識・理解の欠如等があげられる。また,文化史に関する理解が不十分である。

(3) 地埋的分野の問題点の診断

【1】 知識・理解
 問1は,野外の観察と調査の学習に欠くことのできない地図記号についての知識をみる設問とした。(1)〜(6)の小問はいずれも満足な正答率を示している。設問そのものもあまり思考を必要としない比較的単純な要素を求めるものであったためと考察できる。しかし,実際に5万分の1の地図による観察・調査の学習が実施されていれば,もっとよい正答率となろう。

 問2は,略図から日本の近辺の国ぐにを読みとる設問であるが,五つの選択肢から二つの正答を選び出す基礎的理解をみる問題であったので,正答率は予想どおり高い数値を示している。

 問3は,「わが国の工業地帯と生産額の割合」についての問題であるが,@京浜(69.4%)A阪神(56.4%)B中京(40.4%)とだんだん正答率が低くなってきている。このことは,日本の工業地帯の相互の関連や工業生産額の時代的変化の実態を,統計グラフなどによって習熟させる学習訓練の不足の現われと思われる。(2)の問いもやはりグラフの読み取り訓練の不足が,正答率の低くなった原因と考えられる。

 問4は,「工業都市とその工業製品の関係」をみる問題であるが,@一宮(21.8%)A釜石(52.5%)B宇部(45.1%)C苫小牧(45.1%)といずれも低い正答率である。このことは,その諸地域についての地理的諸条件や役割を総合的に考察させ,その特色を理解させることがたいせつであることを示している。具体的な指導として,自然の特色,歴史的背景,交通の発達,他地域との関連などの多方面から理解の定着をはかるべきである。

 問5の問題では,(2)の小問はいずれも基礎的な農産物の産出県を問うたもので,予想どおりの高い正答率を示している。特に低い正答率を示したのは,(2)のA「まゆの第一生産県」についての問題である。この隔没点は,各種農産物の生産額グラフの読みとりにあたって地域の生活と産業との結びっきにたった総合的な理解を定着させる指導に欠陥があったためと考察できよう。

 問6の設問は,自然の特色に応じた農産物との関係をみた問題である。特に低い正答率を示したのはA・B群とも「輪中地域」である。特色ある地域の生活や産業についての基礎的な埋解の指導についての甘さがみられる。

【2】 資料活用の能力
 問1は,「日本の気候」についての出題であるが(1)(2)の設問ともあまり正答率はよくない。(1)の設問は,最も基本的な日本の気候区分の特色を問うたものだが,その理解が確実に定着していない。原因として考えられることは,気候区とそれぞれの気候の特色を,気候グラフ・気候区分図などを利用しながら,常に考察させたり確かめさせたりする作業学習の徹底の不足に起因するものと思う。また,(2)の設問は,気候グラフを見て,どの都市の気候を示したものであるかを問うたものであるが,気温と降水量のグラフの関連,比較の思考力が身についていない


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