研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 033/106page
題」が42.2%で最低の正答率を示している。
3問とも,設問形式が違っており,問題をよく読みとることや,条件・関連思考の働きをとらえようと意図したものである。
この領域の正答率は,1年に比べて2年が低い。2年の段階では,地理的事象の絶えざる変化や地域の特色をは握する能力をのばす指導に,いっそう努力すべきである。
(2) 歴史的分野の概要
@ 知識・理解(正答率52.7%)
史実として人名・事件名・事象の説明については理解が確実で,正答率も三つの観点の中では最も良い。しかし2の「だれが,いつ,どんな改革をしたか」という問題や,元禄・化政文化の特色と時期,明治末期の経済・文化の動き等の正答率は30%前後である。これは事象の再認・再生についての知識は優れているが,歴史的事象を総合的には握する力が劣っているためである。また,歴史的事実・事象の要因や日本史と世界史との時期の対比等についても理解が確実でない。歴史年表を使って史実相互の関連や,原因を追求する学習が必要である。
A 資料活用の能力(正答率50.9%)
正答率が最も低いのは,統計資料の読みとりの弱さが反映している。
3の(2)(3)(4)のような資料をもとにして,その時代の動きを的確に読みとる学習がふじゅうぶんである。「史料の用語の意味を調べる」とか,「数表の単位に注意して数値を読む」,「全体のどの程度を占めているか計算する」などの能力を伸ばしていく必要がある。
B 社会的,思考・判断(正答率51.2%)
基礎的事項の理解をもとに,時代の特色や歴史的意義を考えるという面では比較的よい結果が得られている。しかし,@で指摘した欠点がここでもみられる。「楽市楽座の政策の意味」「安土桃山時代の文化の特色」「条約改正が実現できた社会的背景」などを総合的に考察したり,提示されている史実から判断する等の正答率がとくに低い。
なお全体的にみて,「二つ以上の事項を関連させて考える問題」「年表からある時代の状況を想起する問題」などはかなりの抵抗がみられる。
(3) 地理的分野の問題点の診断
【1】 知識・理解
問1は,投影法についての基礎的な知識の診断をしたが,正答率は図法の名称が55%,特色の理解が53%,地図の用法が44%となっている。地球儀の活用により,各種の世界地図の特色や長所・短所を実証的に確かめさせ,その要点を理解させることに重点をおく適切な地図利用の指導にあたりたい。モルワイデ図法の用法が最低の正答率44%であったことは,人口や産業分布図をさかんに利用しているものの,図法そのものへの関心が,きわめてうすいためであろうか。
2「世界の気候区分」に関した問題の結果は,小領域別にみると,C群の正答率44.6%,D群の正答率70.2%とかなりの開きがある。D群(気温と降水量グラフ)は,説明文をグラフに照らして考えれば,はなはだしい読み違いがない限り正解できたと思われる。
C群(主な農産物)は,西岸海洋性と小麦,針葉樹林気候とてん菜の正答率が低く,農産物分布と自然的条件の関係理解がやや欠ける。
3「主要国の開発の歴史や産業の発達状況」の理解は,50%と上回っている。合衆国やインドが60%台の正答率を示したのはメキシコやデンマークと比べ,時間配当も多く,主要国に対するイメージが強い結果ではなかろうか。
4「主な工業地帯と主な工業都市」は最低正答率32.9%となっている。小問ごとの結果は次のとおりである。
A 特色 B 都市イギリス中央部 24.3% 39.4%西シベリア 39.2% 39.2%中国東北部 12.0% 26.2%ルール地方 43.5% 39.9%A・B群ともに選択肢は8で,4地域に関係ない合衆国やスイスも含まれる。誤答の傾向分析はできなかったが,なぜ低い結果がでたか,次のような推測ができる。
○例えば,イギリス・中国内にある複雑な工業地帯,その地理的条件や,果している役割についての考察が十分でない。
○工業地帯の位置確認がよく指導されていない。
講義による一斉指導が中心になり,生徒の能動的な活動場面が少ない。