研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 035/106page
(4) 歴史的分野の問題点の診断
【1】 知識・理解
ア 1の(4)
オランダ,イギリスが平戸に商館を建てて貿易することを幕府が許し,歓迎した理由について,ウと誤答しているものが大半である。これは,幕府が鎖国政策をとるにいたった理由を述べたものであり,設問を読み違えているか,江戸時代→キリスト教禁止→鎖国とだけは握しているためであろう。
イ 2の(1)(3)(4)
松平定信→寛政の改革(D)の答えはよくできているが,その内容についての理解が劣る。水野忠邦については天保の改革→株仲間の解散 と内容を判断するのはできている。新井白石については,長崎貿易の制限と内容は理解しているが,時期はA,Cの誤答例が多く,八代将軍徳川吉宗と混同しているとみられる。また,新興の町人の台頭などを背景にした元禄文化を,イ(桃山文化)と答えている者,化政文化をウ(元禄文化)と混同している者が約半数をしめている。政治や経済の動きと切りはなして人物や事項の羅列で文化の学習が終わってしまっては,時代的背景を考えながら理解することにならないと思われる。
さらに,18世紀後半と19世紀前半の外国のできごとを対比する問題は,天保の改革頃の東アジアの情勢というは握がなされて@のアヘン戦争と答えているのが約40%いるが,Aの清教徒革命と答えているのも20%程度を占めている。年表を活用して時代の傾向を読みとる学習が必要であろう。
ウ 5の(2)(4)(5)
@の大日本帝国憲法の発布は,内閣制度の成立期と関連させて理解しているようである。Aの戌辰の役を(c)の時期に答えているのは,一連の士族の反政府運動と誤解していることによるものであろう。明治維新が内外の複雑な情勢の中で進められた経過を指導する必要がある。(4)の誤答はア(帝国議会)とするものが大半である。(2)の@が64%とできているのに内閣制度の成立以前に答えているという点は,やはり立憲政治の成立経過を統一的には握していないためであろう。
(5)のA群はわが国の産業革命の進展期をおさえて40%の正答率を示しているが,アの誤答が多いB群は社会・経済の動きが,文学の面にどのように反映しているかというは握がなされていないため,正答率が28%と低い。また,正答したものの中でも,日清・日露戦争を経てわが国の資本主義がいっそう発達していろいろな社会問題がおこってきた時期と自然主義の文学を結びつけて考えたものは少ないのではないかと思われる。「文化の取り扱い」(指導書P,257)を参考にされたい。
【2】 資料活用の能力
ア 1の(1)(2)
@ABの順に正答率が高いのは,史料文に対する抵抗の低い順になっているためであろうか。Bについては江戸時代のものであるとはわかっているが,内容が倹約を定めたものと判断して7(倹約令)とか,エ(御定書百ケ条)と誤答している例が多くみられる。
(2)は「五ヵ条の御誓文」と判断していても史料そのものの検討はあまりなされていないようである。
イ 3の(2)(3)(4)
数表をもとにして地租が収入にしめる割合を求める問題は,基礎的な読み取りであると思われるが,意外にできていない。
6,060万円という数値そのものを読んで,イ(60%)と答えている例が多いことからも生徒が資料を使って解釈するという学習の場面が少ないのではないかと,思われる。(3)のアについて無答が目立っている。計算ができないためか,あるいは計算をしないで概数で答えようとしたためか,ここでも数表で変化を読みとるということがおろそかにされている傾向がみられる。ウはほとんどが「140」と表の数値をそのまま書いている。数表の単位を確認してから数値を読みとるという操作が明らかになされていないことを示している。
ウと共に正答率の低いのが(4)であるが,グラフの中の1884年〜1911年という年代から,この時期の産業経済の動向をは握していないとむずかしいものとなろう。
【3】 社会的思考・判断
ア 1の(1)(2)(5)(6)