研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 053/106page
で表わす)について,逆元を求めさせるものである。
誤答には,,−4といったものが多く見られた。これらは,乗法の逆元,加法の逆元と全く同じく考えているものと解される。したがって,四則算法と演算の相違をしっかりとらえさせる指導が大切ではないだろうか。
なお,(3)のつまづきの原因と思われることをひろいあげてみると,
@ 演算の意味をよく理解していない。
A |a−b|の式の意味(計算のしかた)がわかっていない。
B 単位元の意味をよく理解していない。
C 逆元の意味をよく理解していない。
などが考えられる。
【1】−3は,等式を変形し,特定の文字について解く問題である。正答率は19.0%と極めて低い。誤答をみると次の四つの類型になるようである。
@ 式を変形して特定の文字について解く,という意味が理解されていない。
A 分配法則によってかっこをはずすことができない。
B 移項する操作ができない。
C 等式の両辺に同じ数をかけ(わっ)ても,相等関係が保存されるということがよくわかっていないし,使えない。
【1】−8は,不等式の性質を用いて,一元次不等式を解くことができるかどうかをみる問題である。ここでは特に,変域と解の集合の関係についても評価できるように問題が構成してある。正答率は,(1)が25.7%,(2)が15.7%とかなり低くなっている。誤答は大別すると次の二つに分けられる。
@ {x|x≦4}とするもの。
A 解の集合を求める方法がわからないもの。
Bについては,劣の変域を考慮しないための誤りであり,方程式や不等式の指導にあたっては平素からじゅうぶん配慮する必要があろう。
Cについては,方程式と対比するなどして,「解」や「解く」ことの意味について理解を深めるとともに,形式的な操作に終始することなく,基本的なものがじゅうぶん解けるよう配慮することが大切ではないか。
なお,答えは集合の記号を用いて表わすように指示されているが,この指示の意味がよく理解できないとみられる誤答もあるので,平素の指導において,望ましい表記のし方を身につけさせるように心がけることが大切であろう。
【2】 関数
2〜5の問題は,一次関数の特徴について理解し,それを用いることができるかどうかをみる問題である。
この中で,問題3の平均正答率は18.8%,問題5の平均正答率は(1)が12.5%,(2)が12.7%と極めて低い。まず,問題3について,誤答の傾向と,誤答の原因をさぐってみる。誤答で最も多いのは,xの変域が正の整数であることを考慮しないで,xとyの関係y=2x+100を,直線として描いているものである。次いで,数量関係を式に表現する過程で誤っているものが多い。
前者は,変数xがリンゴの個数を表わしているということから,変域が正の整数に制限されることに気づくことがポイントになる。方程式や不等式の場合もそうであるが,特に関数においては,式が全く同じであっても,変域が異なれば別のものと考えるわけで,日常の指導においても,変域に特に目をむけた指導が大切なのではないだろうか。また,変域が正の整数である場合,有理数である場合,実数である場合など,グラフにどのような違いが生ずるかについての指導に留意する必要があろう。
問題5についても,問題3と同じような誤答がみられ,つまづきの原因も共通している点が多い。特に(2)については,x,yの関係式が陰関数の形で与えられているために困難度を増している。
【3】 図形
問題2〜11は,三角形の合同条件や相似条件を用いて,図形の性質を調べることができるかどうかをみる問題である。この中で,特に平均正答率の低いものをいくつかとりあげて考察してみたい。問題6は,相似な図形の相似比,面積比についてのものであるが,平均正答率は(1)が28.2%,(21が7.2%となっており,(2)が特に低い。
(1)の誤答を,その原因と想われるもので類別すると,
@相似な図形の相似比と面積比の関係が理解されていないもの。