研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 063/106page
(2) 結果の考察
第1分野(化学的領域)
この領域では,「知識・理解」が,他に比較して低い正答率を示している。これは学習過程に重点がおかれ,そのために,基礎的な科学的事実や概念の習得がおろそかにされがちであるという,最近の理科学習の指導上の反省と一致する。
なお,分担のつごう上,「物質の特性」に関する内容を,この領域に含めて考察した。
@ 知識・理解
【4】と【7】は,物質の特性についての理解をたしかめる問題であるが,正答率は,それぞれ49%,33%と低い。【4】の誤答のほとんどが,工 沸点に集まっていること,【7】の融点の操作的定義の正答が著しく低いことなどから,特性の1つとしての融点,沸点の指導法に改善の必要があるように思われる。
ここでは,ナフタリン,パラジクロルベンゼンおよびその混合物等を用いて,純物質の融点は一定であることを,実験結果から導くわけであるが実際に測定してみると,純物質でも加熱曲線に水平部分があらわれず,融点を特性の1つとして定義することが困難なことが多い。使用する物質の量,純度,測定装置,加熱のしかた等をよく吟味して,よい結果が得られるようにするとともに,この測定を,他の物質についても試みて一般化し物質の特性の1つとして融点をはっきりと定義させることが必要である。沸点についてもまったく同様であり,いずれもより正確な資料を得るくふうと,その資料から結論を導く段階の重視が要求される。
このことは【10】で,固体が液体になるときの温度が液体が固体になるときの温度よりも高いと考える生徒が多いことからもいえよう。
【14】,【15】は,固体の分離についての理解をみる問題であるが,食塩は水にとけ,ナフタリンは水にとけないこと,ろ過,ろ液の意味などをはっきり理解していない生徒には解答できない。【15】は,熱する,乾燥するなど,正答に近いものを入れても約半数の生徒はできなかった。
【9】は,二酸化炭素を吸収する物質を答える単純な問題であるが,これも約半数が,ピロガロールのアルカリ性溶液とイソプロピルアルコールに反応している。いずれも正確な知識が身についていないために正解が得られないのである。
A 観察・実験の能力
【2】は,測定値を分類する能力をみる問題で,図の中に原点を通る直線が何本引けるかによって,何種類の物質であるかを判断するわけである。
(下図参照)
正答率は54%で,誤答の中には,9種類,あるいは10種類とした生徒が多かった。これは,グラフの見方そのものができないもので,ここでは測定値の傾向からグラフが書けること,グラフから密度を求められること,そしてそれが物質の特性の1つとして物質の識別に役立つことなどについての理解が,実際の測定を通してなされるような指導が強調される。
【8】は,気体を分離する装置を組立てる能力をみるもので,実際にくふうして組立てた生徒には簡単に解ける問題である。正答率は比較的高かったが,類似の装置,ウに反応した生徒もかなりあった。
B 科学的な思考
【3】は,直線の傾きに着目し,それと密度の大小の関係を考察させるものであるが(上記のグラフ参照)正答率は30.9%と低い。原因として考えられることは,密度についての理解不十分,H・J・Aを1つのグループとしてみることができない,傾きの違いが何を表わすか考えがつかないなどがあげられると思うが,いずれにしても【2】で述べたような指導が必要とされる。
【5】,【6】は,溶解度のグラフを解釈する問題である。その中で【5】は,グラフを読みとる基礎的な能力をみる問題であるが,この程度の問題は,全員に近い正答率を期待したい。【6】は解釈するのに,やや複雑な思考操作を必要とするので,正答率も