研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 064/106page
43.0%と低くなっている。授業の中で,実験を通して実際に溶解度曲線を求めることはむずかしいか,少なくとも,温度差によってとける量の違いを定性的につかませる実験を通して,その結果と溶解度のグラフを対比して考えさせることが必要である。そして,ただグラフを読みとるだけでなく,内そう法,外そう法など,いろいろな活用のしかたを,数値を変えて訓練しておくことが,今後の指導のためにも有効であろう。
なお,飽和溶液の概念は,なかなかむずかしいので,実際に溶液のいろいろな操作を通して,飽和,未飽和の区別ができるようにしなければならない。
【11】,【12】,【13】は,液体の加熱曲線を解釈する問題である。もちろん,ここでは,加熱曲線の作り方純粋な物質では水平部分があらわれること,その水平部分は,物質の種類が同じであれば物質の量に関係なくあらわれることなどが,実験を通して理解されていることが基礎的事項として必要である。
【11】は,その中でも単純な問題なので正答率は75.9%と高いが,全員に正解を期待したい。【12】は61.0%が正解であったが,ADに22%,BCに16%が反応している。ADは,水平部分の始まる時間が同じで,2つの線が平行になっているのが目だっているし,BCは,加熱曲線が途中で枝わかれしているものである。いずれも,グラフの上では特別な意味がありそうだが,この問題と直接関係はない。【13】についても同じことがいえるが,このようなグラフのいろいろな違いの原因が何であるかをよく検討させることは,ひじょうに大切である。
例えば,グラフの出発点は何を意味するか,傾きの違いはなぜ起こるか,途中で枝わかれしているのはなぜかなどについて,実験の操作(方法)と対比して考えさせ,このような違いはあっても違わない量(水平部分の温度)があったら,それは何か,また,その量は何を表わしているかをよく考察させておくことが必要である。
第 1 分 野 (物理的領域)
この領域の観点別の平均正答率を整理すると,「知識・理解」が27.7%,「観察実験の能力」が46.2%,「科学的な思考」が50.4%である。もっとも,問題数がそれぞれ5問,3問,2問とかたよりが大きく数値だけをみて学力をどうこうと言えないが,「知識・理解」が劣るのは,日頃の指導に反省してみる必要のあることを示唆しているのではないか。以下,観点別に考察してみる。
@ 知識・理解
問11【17】は机上の鉄棒による圧力を求める問題である。正答率36.1%,意外に理解されていない圧力の概念,表わし方は一方的に教えこむものではなく,生徒自身が探究の過程の中で,測定したりする操作によって操作的に圧力の概念を定義し身につけるようにすべきものである。
スポンジのへこみぐあいを測定したりして概念を導入し,圧力を単位面積あたりの力の大きさで表わす操作を経験させたい。
問13 【20】急な坂道を登るとき,ジグザグに登ると楽に登れるわけを答えるのだが,正答者は1/3である。力,距離,仕事などの概念は握が不充分なのではないだろうか。
小5で学習している斜面について,中学校では単一機械を利用して重いものをもち上げる場合の仕事と,直接もち上げる場合の仕事とを比較させ仕事の原理を導くようにする。
力で得をした場合には距離で損をし,その積である仕事には変わりがない。このように不変に保たれている量に着目することは,自然現象を統一的に理解するのにきわめて重要である。選択肢にまぎらわしい文章を並べてあるが「仕事は同じである」と自信をもって選べるように基本事項を理解させたい。
間14の【21】 数種類の金属の比熱を示した表から同じ重さの金属球を同じ方法であたためかたをしたとき,一番温度の上がりかたの大きいものを選びなさいという問題である。正答率は23.2%,単純に数値の最大または最少のものを選んだとしても50%内外の正答率になると思われるので,23%の正答率になったのは,同じ重さの金属球という問題文が,比重などを混同してしまったのではないだろうか。要するに比熱についての理解が不充分で算出操作の不足が考えられる。熱量の測定実験も,時間をかけ念入りにやることのできない実情もあるし,ドリルの時間も思うようにとれないので,今後,指導内容の重点化等によって指導時間を生み出す研究もしていかねばならないと思う。