研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 065/106page
0点にはたらいている力の大きさはいくらか選択肢の中から選ぶ問題である。これも正答率28.1%で,選択肢が4つであることを考えると自信のない回答とも受けとれる。
実際に,指導してみて感じられることは,8kg重の力と答える生徒は予想以上に多い。左右に4kg重ずつだから合計して8kg重と考えるようだが2つの力のつりあいの条件をしっかり理解させたいものである。2つの力がつりあっているときの力の大きさや方向を調べさせ,つり合いの条件を発見させるような指導によって,いろいろな場面に適用できる力をつけたいものである。
これと同じように,間違いやすい場合としてつぎのようなものがある。ばねを引いてのばしたとき,ばねにかかっている力の大きさは図−1のA,B,C,D点ではいくらになるか。2つの力のつりあいの条件から解釈できるようにしておきたい。
図1
問17【25】 床の上にある重さ60kgの箱を,水平方向に動かすために必要な力はいくらかという問題で18.3%の正答率である。これも指導してみて感じることであるが,物体の重さより大きい力で引かなければ動かないと、思っている生徒が多い。まさつ力そのものがとらえにくい力の一つである。
あらい水平面上で物体を動かすには,まさつ力に等しいかそれ以上の力を作用しなければならない。このとき,力が物体にした仕事は,作用した力と移動した距離との積で表わされる。物体に作用した力が摩擦力に等しいときは,物体はつりあいを保ちながら移動し,物体にされた仕事は熱的エネルギーに変わり,物体や台の水平面の分子の運動エネルギーとなる。このような摩擦力と仕事との関係をは握できるように指導し,摩擦力に対するつまづきをなくしたいものである。
A 観察実験の能力
問12【18】つるまきばねにおもりを下げたとき,おもりの重さとばねののびについて,グラフ化の問題である。小学校で取り扱っている内容だが56.7%と低い。たて,横軸に数字を目盛ってあり,単に測定値をプロットしてグラフを作る問題だが低い正答率の原因はどこにあるのだろう。
二つの量の間の法則性をみつけるには,測定値をグラフにしてみるのが普通である。また,グラフをかくときは,測定値を表わした点のすべての近くを通るなめらかな線で描く。点から点を折れ線で結んだりはしない。これは,自然の変化の中で不連続的に起るものがきわめて少ないこと,測定値に誤差がふくまれていることなどの理由によるのである。
このような点に注意してグラフ化の指導をいっそう強化する必要がある。
問14(2)【22】の問題は100gの銅に360calの熱を与えると何度温度が上がるかというものだが,これも
熱量=比熱×質量×温度の変化差
の一般式を用いるとそう困難でないと,思われる。(計算練習をすれば21.8%の正答率は大幅アップできるのではないか)
B 科学的な思考
問10【16】ボイルの法則は「気体の体積は圧力に反比例する」というものであるが,測定結果をみる重と,注射器内の空気の体積と,加えた力とが反比例の関係になっていない。その理由を問うているのだが65.6%の正答率である。この測定は大部分が生徒が経験しているし,関係を導き出すとき大気圧の大きさを算入しているので正答率も高かったものと思う。
問16【24】正答率は35.2%であるが,この実験を経験している生徒は少ないのではないかと思われるが予想以上に高い正答率である。水の膨張に着目する生徒は多くとも沸とう前の水蒸気を考察するのは容易でない。沸とう直前の水蒸気の圧力によって大部分の水が押し出されてしまうことに気づいた生徒は,既習の知識・概念を課題解決