研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 068/106page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

これは問題の図によっても考察できるという補助手段があるためとも考えられる。
 全体を通じて,基本的な事項の理解(発展性のある生きた知識)に欠ける面がみられるので,今後この点に力をそそぐ必要がある。

A 観察・実験の能力

 ペーパーテストにおいて,観察・実験の能力のすべてを評価することはできない。
 そのような意味から,ここでは【18】,【19】,【20】,【21】,【22】の設問のみから考察してみたい。

【18】,【19】は既有のデータをもとに発展して新しい事実を推論する能力を見たわけであるが,【18】の正答率41.0%からみると予想よりよい結果を得ている。これは天体の指導の中で総合的な関連的な関係(天体の運動は各個それぞれ独自な運動としてとらえては意味がない)をおさえながら学習が進められている点のあらわれとして高く評価したい。
次に【20】の設問であるが,正答率8.0%で極めて低くなっている。
設問【20】

この理由としてあげられることは,まず第一に透明半球をもちいて太陽の運動を観測はさせるが,その結果の処理についての取扱いに問題があるようである。  このことは一般的に言えることであるが,「観測の実施にあたって一体何を得ようとして行なわれたか」ということが,非常に重要なことである。

 このことが本当の意味で侵透していないと,結果の処理の段階で問題がおこってくるのである。つまり,観測はしたが太陽の単なる日周連動を理解しただけで終ってしまうことになるのである。

 また,目的は握の段階の学習が充分であったとしても,最終的にそれが充分達成するまで学習が発展したかどうかということも反省しなければならないことである。
 【20】の設問の場合,方位の決定はこの観測の中では必要欠くべからざることで,それを通過しなければ太陽高度変化の比較,あるいは年間を通じての季節別の太陽の動く道すじの変化,地軸の傾きの学習などに発展でき得ないわけである。
 そのようなわけで,データ収集後の処理についての指導の徹底,習慣性を充分はかりたいものである。

B 科学的思考

 ここでは,問題9 設問【14】,【15】,【16】,【17】を設定した。
 この問題は,いわゆるデータ収集後において,それを基盤にいろいろと思考を働かせて結論へ到達させるための,いわゆる思考の段階を見ようと考え設定したものである。

 透明半球などをもちいて,各季節別に特徴の異る太陽の動きの観測データを集めたり,あるいは10日間隔くらいに同時刻の星座を観測して,太陽と星座の位置関係が少しずつ変化してくる様子の観測データなどから,地軸はどうなっているのか(地軸の傾斜)あるいは季節の変化に伴って地球と太陽の位置関係はどう変化するのかなどを考察しようとするわけであるが,その過程で当然モデル化が必要になってくるのである。モデル化はすべて具体的な立体模型を作って考えるという意味と同意味ではないが,天体の領域の場合には,対象が動きのある立体であるだけに,当然目的にあった立体的な思考モデルが必要になると思うし,しかもその方が,思考を容易にするものである。

 まず,地軸の傾きで最初に考えられる地球と太陽との関係は,問題9の図にあるような12の組みあわせであろうと思う。つまり,生徒達がゆっくりと時間をかけて考えれば,当然予想することのできるものである。

 【14】は昼と夜の長さがいつも等しい場合のすべての位置関係を設定するものであるが,内容を分析してみると8個の組合せのうち,いくつかは予測しているが,全体をもれなく検討し得ない点がある。しかし,「自転して,昼・夜の時間が一定になる場合」の基本的な条件を充分には握していれば,系統的にみていくことにより充分解決しうるものである。

 その後において事実と一致しないもの,たとえば【8】の場合,「年間を通じていつも昼夜の長さが一定である」ということにより,実態に反する。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。