研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 071/106page
(2) 結果と考察
第 1 分 野 (物理的領域)
この領域での観点別の正答率を平均すると,「知識・理解」23.5%,「実験観察の能力」51.3%,「科学的な思考力」47.5%となっている。問題数はそれぞれ5問,3問,4問,計12問で構成している。この観点別平均正答率からは,難解な問題が多かったのか「知識・理解」の低率が目につく。以下,順に考察してみよう。
@ 知識・理解
問題2 【2】真空放電管の放電現象から電子の電気的な性質や粒子としての理解がなされているかをみる問題である。
「電流と電子」では,電子を導入して電流を電子の流れとして理解させるのがねらいである。電流の正体は何かを認識させるため電子という粒子を考え,その流れから電流をは握させる。
放電管の羽根車の入ったものや,陰極線の直進性のみられるもの,平行極板の入ったもので放電させ,電子の概念を導入し,電流に関する既習事項や諸現象を関連させて整理しておくことがたいせつである。
この電子モデルも教師によって与えられるものではなく,現象や実験を通して生徒によってつくられ,生徒の思考を助け,発展していかなければならない。
問題3 【4】電熱線で消費する電力と発生する熱量との関係から,1ワットの電力で発生した熱量は1秒あたり何カロリーになるかを求める難問である。正答率16.1%は「知識・理解」の問題中最低である。
示された資料は,電圧,電流,総熱量,時間でこの資料を使って電流による発熱量=K・E・ItによってKを求めていくのであるから,理解と計算技能がよほどしっかりしていないと解答できないであろう。
電気エネルギーは何によってきまるのか,電流による発熱量の式,どんな測定によって求められるのかなど一連のものを確実にとらえられるよう指導に際しての目標,指導過程の組織,その他教材研究の充実を期さなければならない。
問題4 【5】省略
問題6 【8】
モーターでおもりをもちあげたとき,モーターが物体にした仕事を単位をつけて表わす問題である。正答率17.7%で【4】につぐ低率である。
1s重のものを単に2m引き上げたときの仕事を求めるとすれば正答率も高くなると思われるが電流計0.5A,電圧計12ボルト,所要時間5秒などの諸要素によって混乱したのではないか。
「知識・理解」に関する問題では,生徒の知識としての定着の度合いが低いようである。探究の過程をたどりながら,実験観察をもとにして科学的に考察を加え,操作的に定義したり,概念を形成していく過程で,生徒みずからの手でなされるよう指導をくふうすべきである。
ある事象と他の事象を結びつけて考察したり,ある原理を多くの事象に適用して考察するなど,総合的,統一的に考察することが必要である。
問題8 【12】20カンテラの光源から1mはなれたついたてと2mはなれたついたてとの照度の比を求める問題で,正答率20.4%,。明るさの理解については,光源の明るさ(光度)と照らされる場所の明るさ(照度)とを区別させることが必要である。照度と光度の間には,中学校ではあまり扱わない距離の2乗に反比例する関係があるのでその関係が導き出される過程の扱いに重点をおいて定量的にまとめることがたいせつであり,結果だけを知識としておしつけることは避けなければならない。
A 観察・実験の能力
実験観察の能力に関する問題は,【3】電流による発熱量を測定する装置を示す配線図(64.1%)【7】電圧,電流の比例関係を示すグラフから電熱線の電気抵抗を求める(58%) 【10】とつレンズによる像と物体までの距離を示すグラフから焦点距離を求める(31.4%)である。
問題3 【3】配線図の問題も各自が実験計画をたて測定したりしているので定着しているものと思われる。実験観察の技能は,ねらいを明確にし実験計画をたて器具の準備,装置の組み立て,測定,結果の処理,考察などの過程を,各自が経験することによって高まるのであるから,生徒のこれらの主体的活動を促すよう指導のくふうを忘れてはならない。
問題【5】 【7】電流と電圧の関係を示すグラフから電気抵抗を求める問題である。
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