研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 073/106page
る割合に正答率が46.6%と低い。誤答は各選択肢に分散しているが,その中でも,ア.還元することのできる物質に38%と集中している。結局正確な知識になっていないわけであるが,ここは,これまで学習してきたいくつかの物質について,分解することができるか,できないか,また合成してつくることができるか,できないかという観点から分類させ,その結果から,元素,化合物を定義させることが効果的であろう。
A 観察・実験の能力
【20】は,還元によって減少した質量ととりだした銅の質量,および,もとの酸化銅の質量の間の関係を調べるものであったが,正答0.8gは約40%で,0.2gという答が多かった。この0.2gは,酸化銅の質量から析出した銅の質量を差し引いたもので,数字の表わす意味をよく考えずに処理してしまったものと思われる。もちろん0.2gは銅と結びついていた酸素の質量であり,これと0.8gと1.0gの関係が解釈できなければならない。授業の中で,この実験を定量的に進めることは少ないと思うが,この単元では,他の実験でも,こうしたデータ解釈力を養うことができるものが多い。
22は,発生する気体の体積を測定するときに統一しなければならない条件をみつけるものであるが,正答率は27.6%と低い。誤答の傾向は,ウ.希塩酸の濃度,エ.希塩酸の体積 の順になっている。金属を完全に反応させて,発生する気体の体積を測定するのであるから,酸の濃度や体積は直接関係しない。体積や濃度を統一することもよいが,気体の体積測定の場合は,まず,温度と圧力の2つに着目しなければならない。このことについては,ほとんどの学校で学習ずみのはずである。この実験の場合は,特に,反応熱による温度上昇と,メスシリンダーで捕集するときの水位の差による圧力差(実際には,ごくわずかであるが)に注目することが必要である。
B 科学的な思考
【18】はいくつかの物質について燃焼実験を定量的に行なった場合に得られた結果から結論として導かれる仮説の適否を答えるもので,ここでは,特にデータを拡大解釈するかどうかをみている。
解答の大部分は,正解イとウに集中したが,ウは開放された系における実験結果を,閉じた系ままで適用したということで,データの拡大解釈と考える。つまり「木炭とろうそくがもえる反応」や「マグネシウムや鉄がもえる反応」という具体物についての事実を,それぞれ「もえるとき,気体ができる反応」や「もえて固体のできる反応」と一般化したものが仮説である。ウに反応した生徒の中には,学習してもっている知識でそのまま答えた者もいるだろうが,問題の要求するところは異なっている。
【20】は,水素が燃焼して水ができるときの化学反応式を,原子,分子のモデルと結びつけて考えることができるかどうかをみる問題である。正答率は,78.8%と高いが,これが具体的な実験結果から,原子,分子の動き,結びつきを思考させてモデル化する過程を通して得られたものとすればこうした指導は,かなり徹底しているといえよう。ただし,これは従来のように化学式や化学反応式を与えて,記憶させる方式でも解答させることはできるが,その場合は,思考力テストにならないわけである。化学反応式の指導はあくまでも,化学反応前後の質量の保存等,化学反応に伴う諸法則を説明するモデルとしての有用性を強調まることに重点をおくもので,ただ記憶させるのがねらいではない。
【25】は,銅粉を加熱して酸化させる場合,その質量の変化から反応が完了したかどうかを判断する問題である。一般にこのような化学反応が完全に終了したかどうかをみるときは,質量の変化がなくなったかどうかで判断するわけであるから,質量の変化がしだいに小さくなり,ついに一定の値が2回以上得られるまで待つのが普通である。この問題では,しだいに質量の増加が少なくなってはいるが,まだその値が0にはなっていない。したがって,まだ反応は完了したとはいえない。しかし,もう一度測定した場合,増加量が0になるとすれば,現段階で反応は完了しているといってよかろう。結局,もう一度測定してみないと,正しい判断はくだせないわけである。かなりきわどい問題であるが,約半数の生徒が正解している。
前に述べた【18】についてもいえることだが,このように,結果の拡大解釈を慎しむとか、オープンエンドに関する指導は,割合によくなされているように思われる。なお,誤答の中でウに反応した生徒が多かったが,設問の意味を誤解してい