研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 074/106page

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るようである。

第 2 分 野 (生物的領域)

 この領域の観点別の平均正答率を整理すると,「知識・理解」が45.4%「実験観察」が50.7%「科学的思考力」が51.6%となっており,数値の上では「知識・理解」がやや劣る結果となっている。

 これは,【6】の問題でいえば茎の断面図をみて部分のはたらきはわかっても,その名称をおぼえていないということ。【10】の問題では,血液の循環を,部分的には理解していても、循環系として理解した上での部分の理解となっていない結果と考えられる。

 それで学習指導上留意したいのは,生物個体が生きてゆくための,生理的メカニズムとの関係で,個体の部分の役割り,はたらき,つくり,といったものを理解させるようにしていかないと,すぐに「わかる」ということにはならないし,あとで生きて働かない理解事項になるのではないかと懸念する。また部分の名称などは,確実におぼえさせておきたいものである。
 以下,観点別に考察してみよう。

@ 知識・理解

問題別の応答の分布はつぎのようになる。
問題1の(2)(○印が正答以下同じ)

解答
○O2
養分
光合成
他・無答
応答率
32
20
8
10
30

問題2の(3) ×印は誤っているところ

選択肢,組織名
○ウ,師管
ウ,×
×,師管
誤無答
応答率
16
18
16
50

問題3の(3)の【10】

選択肢
○イ
応答率
39
20
20
21

問題1の(2)は,根から吸いあげたH20と,空気中からとり入れたCO2と光のエネルギーを受けて,葉緑体の中で糖・デンプンのほかに何が合成されるかを模式図の一部を完成するという形で出されている。

 内容としては,すでに小学校で実験等も行なっているものであるから,困難な問題ではないと考えられるが,記入した物質が前表のとおりで全く関係のない物または事項,無答がかなりの率をしめている。

原因として考えられるのは,光合成そのものをよく理解していない生徒がかなり多いのではないかということと,植物は,光合成をして,その作られた栄養分を使って生きるようなからだのしくみをもっているものであるということを,物質交代とエネルギー交代について理解を深めるという意図のもとに,模式図等によって一般化して理解させていないためであろうと考えられる。

 問題2の(3)は,双子葉植物の茎の横断面図を前問で示し,この図を使って葉でつくられた栄養分を運ぶために存在する部分を記号で答え,さらにその部分の名称を書かせる問題であるが,正答率は16%,記号はできても名称の書けないもの,名称は書けても記号の書けないものが,計34%,誤答無答が50%をしめている。

植物の茎を赤い色素液に入れて横に切り,維管束を観察したり,うすい切片をつくって顕微鏡観察したりということは,学習の中で行なわれるはずであるが,観察したことを,部分のはたらきと名称を関連づけて,しっかりとおぼえさせることが大切である。

探究の過程を大切にして科学の方法を身につけさせるためには,生徒に思考させ,発見させることと,教えることをはっきりさせて,教えることは正しく教え,教えたら記憶するまでドリルすることが必要であろう。

問題3の(3)の【10】は,ほ乳類の血液の循環系を表わした模式図をかき,その静脈の部分Aを指示しその部分の血管は次の文のどれかを答える問題である。
ア 血管の壁は厚くて弾力がある。
イ 壁はうすく,血管のところどころに弁がある。
ウ 一層の平らな細胞でできていて,きめ細かい。
エ 血管からしみ出した組織液の流れる管である。

この問題は,血管の種類とはたらきを血管の構造との関係で,どの程度理解しているかをみようとするものであるが,誤答の傾向と応答率から,その理解が極めて低いものであることがわかる。


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