研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 075/106page

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原因としては,全身をまわって心臓にもどってくる血液と血管の名称については,小学校でもすでに学習していることで,図の矢印をみて静脈であることは容易にわかることである。しかし,血管の構造とはたらきとの関係で理解していないために,正しい解答が選択できなかったと解釈される。
 また,血液の循環を,心臓を中心とした一つの系として,総合的に理解していないことも一因と考えられる。

A 観察・実験の能力

問題別応答分布は次のようである。
問題2の(1)

選択肢
応答率
6
5
38
2
46
3

問題4の(1)

選択肢
応答率
14
17
66
3


 問題2の(l)は,,ホウセンカなどの植物を使って茎を赤い色素液に入れた後,茎の横断面をつくり色素のつき具合から導管の部分を調べようとする問題で,授業の中で実験をやっていないと正答は出にくい問題である。応答率では,ウの篩管の部分と答えている生徒が38%にもなっているのが目立っている。

 原因としては,実験の際,茎を色素液に入れておく時間が問題になるだろう。色素液が茎を上昇する速さは,実験室の湿度とか植物の種類,植物の葉全体の表面積の大小にも関係するが,かなり速いものである。5分も10分も色素液につけておいたのでは,茎全体が染まってしまって,実験の目的を達成できない場合が多い。

 実験に際しては充分に予備実験をしてから生徒にやらせるとか,同じ植物でも色素液に入れておく時間を,数秒単位で差をつけ,茎のどの高さまで染まっているかということから,上昇速度と染まっている部分を関連させながら実験をすすめるなどの配慮が必要であろう。それから指導の留意点としては,茎の各組織のはたらきを名称と関連させて正しくおぼえさせることが大切である。

B 科学的思考力

問題別応答分布は,次のようである。
問題1の(3)

選択肢
応答率
8
12
42
38

問題4の(3)

選択肢
応答率
14
40
9
37

問題1の(3)について検討すると,グラフをみながら,A点では光合成作用か呼吸作用かを判断する問題であるが,光合成と呼吸の理くつが実験を通してわかっていなければグラフを読みとれない。

 エ 光合成と呼吸が等しいと答えているのが38%もあるのは,指導上の問題であろう。
問題1の(3)

第 2 分 野 (地学的領域)

 第2学年で学習する地学的分野の大部分は,地質的領域と,気象的領域である。
 この領域は,理科全体からみると,野外に出てデータを収集しなければ真の探究の過程を重視しながら学習を発展させることのできないという困難さがある。
今回のテストにも,その段階をふんでいるか,否かの差が大きく認められる。

全体を通してみると,第1分野,第2分野平均正答率45%に対し,地学分野はやや劣る程度であるが,調査実施対象者の地域的な差が大きいのは,野外で実際に対象物を見たり,手にとって観察したりする過程を隔てているか,否かの差が大きくあらわれているようである。

 また,知識・理解,観察・実験の能力,科学的思考の3つの観点を比較してみると,知識理解の部分がやや劣るようであるが,全体を通じて1学年の天体領域で見られるような大きな差はない。


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