研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 079/106page

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(2) 結果の考察

第 1 分 野 (化学的領域)

 中学校における物質概念の総まとめで,「物質と電気」の領域に関するものである。ここでは,知識・理解と観察・実験の能力の平均正答率が,それぞれ約58%なのに対して,科学的思考が約25%と著しく低くなっている。これは,内容がかなり高度なものであることも一因と思われるが,特に3年の場合は,教材が豊富なことなどもあって,実際に問題解決の過程を通して思考力を練る機会が少ないことも原因として考えられないだろうか。

@ 知識・理解

 @は,電解質,非電解質についての知識をみる問題で,正答率75%は,再生式の設問の中では高い方で,かなりよく定着していることがうかがわれる。

 E,Fは沈でんの生じるイオン反応についての理解をみる問題である。Eで沈でん物質の化学式はBaSO4以外にはないわけであるが,正答率は45%と低い。沈でん物質そのものがわからないのか,あるいは,その化学式がわからないのか判断しかねるが,やはりここでは,実験を通して水溶液どうしの混合による沈でんの生成を実際に経験させるとともに,その現象を水溶液中のイオンの動きとしてとらえさせることが必要であり,さらに,沈でんを生じるイオンの組み合わせと混合したときに生じる沈でん物質名とその化学式も現段階でははっきり覚えさせておくべきであろう。

 Fは,この実験で沈でんを生じる理由を答える問題であるが,43%の正答率はEとほぼ同じであり,実際Eを正答しているものはほとんどこの問題にも正答をしている。また,誤答に特定の偏りがないので,Eの反応とあわせて考えると「沈でん」の意味がはっきりしない生徒がかなりいるのではないかと思われる。

 これは,これまでの一連の溶解教材に関する指導と,イオン反応の指導を通してじゅうぶんに定着させておかなければならない。

 Iは,電子構造の概略についての知識をみる問題で,正答率70%は特に問題はないが,指導にあたっては,次の点に留意してほしい。原子構造の学習を生徒の探究に求めることはもちろん困難であるが,そのため,とかく通り一辺の指導で,知識のおしつけに終ってしまう傾向がみられる。

しかし,原子構造のモデルとしてこのようなものを考えることによって,いろいろな事象がうまく説明できることなど,科学におけるモデル形成の意義をよく理解させることが大切であり,また,そのために適した教材である。

A 観察・実験の能力

 Aは,塩化第二銅の電気分解による質量変化を測定する実験を経験しない生徒には難解であろう。

電流を通し,一定時間後に極板をとり出し質量を測定するわけであるが,操作のしやすさ,正確さなどを考えれば,当然,電源を切り,電流を止めてから行なうべきである。この実験に限らず,電流の関係する実験で配線に手を加えるようなとき特別の目的がある場合を除いては,必ず電源を切ってから行うように習慣づけておきたい。

 Cは,イオン化傾向についてのデータの解釈に関するものであるが,これも実験を通してイオンになりやすさと金属の析出の関係について理解していることが前提になる。ここでは,実験結果からイオン化傾向の大小関係を,不等号などで結びつけたりして比較検討し,その順位を発見させる指導をていねいにしなければならない。もちろんいくつかの金属について,イオン化傾向列を覚えさせておけば,すぐ解ける問題であるが,ここはそれがねらいではない。

B 科学的な思考

 Bは,塩化第二銅の電気分解によって起こる両極板の質量の変化から,塩化第二銅水溶液中のイオンの動きを推論するもので,正答率は26%と低い。生徒の頭の中にイオンモデルが形成され,それと電子の授受の関係を考えることによって解けるが,かなり高度の思考力を必要とする問題である。ここでは,電解質水溶液の通電現象や電解現象を説明できるモデルとして,生徒自身にイオンモデルを形成させること,また,そのモデルを使って他の電解現象を推論させたり,説明させたりすることの指導を徹底しなければならない。

 Dは,イオン化傾向のちがいから,水溶液中に入れた2枚の金属板の間に発生する電圧を推論する問題である。これは銅,亜鉛,銀のイオン化傾向の順序がわかること(Cの問題である)が前提で,さらにイオンになりやすさと発生する電圧の


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